Jユース出身者の数で見る、いまの日本代表の「ほんとの強さ」

データで楽しむ日本代表トリビア③
戸塚 啓

武藤は初めてのユース出身大卒代表選手


高卒とユースのバランスに、大きな変化が見られたのは2014年のブラジルW杯だ。

高卒選手が過去最少の11人だったのに対して、ユース出身の選手が初めて2ケタに届いたのだ。GK西川周作(大分トリニータ)、権田修一(FC東京)、DF吉田麻也(名古屋)、酒井高徳(アルビレックス新潟)、酒井宏樹(柏)、MF香川真司(FCみやぎバルセロナユース)、山口蛍(セレッソ大阪)、清武弘嗣(大分トリニータ)、齋藤学(横浜F・マリノス)、FW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の10人が、ユース出身者としてW杯のメンバーに選出された。

 

このタイミングでユース出身者が増えた理由には、育成組織の充実があげられる。現役を退いた元Jリーガーが指導者としてジュニアユースやユースに携わるようになったことで、よりレベルの高い技術や戦術を提供できる環境が整っていった、と考えられる。

もっとシンプルな動機づけとして、「元Jリーガーの指導を受けたい」との思いも、素質に恵まれた選手がユースチームに集まっていく理由にあげられるはずだ。

サッカー選手の成長のタイミングは、当然のことながら人それぞれだ。稲本や森本のように高校生年代からJリーグのピッチに立つ選手がいれば、長友のように大学経由で飛躍を遂げる選手もいる。

いずれにせよ、街のクラブでスポーツに親しんでいく欧州や年米に対して、日本では学校の部活が21世紀のいまも重要な役割を果たしている。

下級生はグラウンド整備などの下働きをする、先輩を立てる上下関係があるなど、学校の部活動には独特の文化がある。ただ、実力主義が前面に出るユースとは違う環境に置かれることで、ハングリー精神が磨かれるのは21世紀も変わらない。技術と戦術では越えられない壁に直面したときに、部活で培われたメンタリティーが生きている気がする。

一方のユースでは、高校卒業を待たずにJリーグにデビューしたり、プロ選手に混じって練習ができたりするのが大きなメリットだ。早い段階で高いレベルに触れ、ときには自分の力不足を痛感させられることで、「もっとうまくならなければ」との意欲に持続力が生まれる。ユースならではの長所も、間違いなくあるのだ。

西野朗監督が選んだロシアW杯のメンバー23人は、高卒が10人、ユース出身が10人、大卒が3人である。

▽GK
1 川島永嗣(高卒)
12 東口順昭(大卒)
23 中村航輔(ユース出身)

▽DF
2 植田直通(高卒)
3 昌子源(高卒)
5 長友佑都(大卒)
6 遠藤航(ユース出身)
19 酒井宏樹(ユース出身)
20 槙野智章(ユース出身)
21 酒井高徳(ユース出身)
22 吉田麻也(ユース出身)

▽MF
4 本田圭佑(高卒)
7 柴崎岳(高卒)
8 原口元気(ユース出身)
10 香川真司(ユース出身)
11 宇佐美貴史(ユース出身)
14 乾貴士(高卒)
16 山口蛍(ユース出身)
17 長谷部誠(高卒)
18 大島僚太(高卒)

▽FW
9 岡崎慎司(高卒)
13 武藤嘉紀(大卒)
15 大迫勇也(高卒)

広島ユース出身・槙野智章(photo by gettyimages)
新潟ユース出身・酒井高徳(photoby gettyimages)
名古屋ユース出身・吉田麻也と柏ユース出身・酒井宏樹(右)。酒井高、槙野、吉田、酒井宏が先発すれば、全員ユース出身の4バックになる(photo by gettyimages)


そのなかで、武藤嘉紀の経歴は興味深い。小、中、高とFC東京の育成組織で揉まれ、高校3年時にはトップチームに選手登録もされたが、彼は慶応大学進学を選択する。ここで自力を蓄え、大学2年、3年時に特別指定選手(※2)としてFC東京に登録された。

4年時にはプロ契約を結び、大学生Jリーガーとなる。Jリーグの新人最多得点を記録し、ベストイレブンにも選出され、日本代表にも初招集された。

ユース出身、慶應大学卒のプロサッカー選手・武藤嘉紀(photo by gettyimages)

中村俊輔や本田のように『ジュニアユース→高校→Jリーグ』ではなく、武藤のような『ユース→大学→Jリーグ』というルートは、実はそれほど珍しくない。ただ、このルートでW杯のメンバー入りを果たしたのは彼が初めてだ。

果たして日本代表は、ロシアW杯でどのようなプレーを見せるのか。そして、勝利につながる活躍をするのは誰か。選手の経歴を参考にすると、W杯の楽しみ方が広がるかもしれない。


※ 清水商は2013年3月末に学校再編統合により閉校し、跡地に静岡市立清水桜ヶ丘高校が開校されている。
※2 高校や大学のサッカー部に在籍しながら、Jリーグのクラブに登録、公式戦に出場できる制度。