ビールはかつて、ストローで飲まれていた!?

トリビアだらけ! 人類と麦酒の5000年史
渡 淳二 プロフィール

人気のベルギービールは、じつは「発泡酒」だった⁉

実際に、麦芽の使用比率と使用できる副原料が改定されたことには大きなインパクトがあります。

たとえば、近年はすっかり人気が定着しているベルギービールの中には、原料にオレンジピールやコリアンダー等が使われているものがあります。じつは、これらはこれまで、日本では「発泡酒」に分類されてきました。

「ムール貝の白ワイン蒸し」などをつまみに飲むベルギービールは、日常をひととき忘れさせてくれる“ちょっと贅沢な一杯”ですが、意外にも発泡酒として扱われていたわけです。今回の酒税法改正以後は、ビールと名乗れる場合も出てきています。

すでに市場投入された今春の新商品に象徴されるように、今後は日本のビール造りにおいても、これら副原料の使用が「新たなビール」を誕生させる大きな起爆剤になる可能性があります。より個性的で、創造性に富んだビールが登場してくれば、ビールの新しい楽しみ方が広がっていくに違いありません。楽しみですね。

【写真】ベルギーのブラッセリーに並べられたブルギービールのボトルコレクション
  ブラッセリーにあるベルギービールのボトルコレクション photo by gettyimages

日本のビール史は、クラフトビールから始まった⁉

このような動きに先行するように、2010年代に入って人気を博してきた「クラフトビール」の流行も、ビールを取り巻く環境を大きく変えつつあります。

ペールエールやIPA(インディア・ペールエール)、ポーターといった、これまではあまり耳に馴染みのなかったタイプのビールが、広く親しまれるようになってきています。クラフトビールを専門に扱うビアパブなどで、個性ある味のビールを楽しんだ経験のある人も多いのではないでしょうか?

でも、じつは日本でビールが本格的に飲まれ始めた明治初期には、むしろペールエールやIPAが多く飲まれていたと言ったら、驚くでしょうか?

冷蔵技術がまだ発達していなかった当時、冷却貯蔵設備を必要としないこれらのビールが普及しやすかった背景があるのです。クラフトビールの現在の流行は、いわば一周回って原点回帰したもの、といえるかもしれません。

そして、今回の酒税法改正は、日本各地の特徴を活かした商品開発や個性ある味わいを競い合うビール造りをよりいっそう後押ししていく契機にもなりそうです。全国各地の特色あふれる地酒が楽しまれているのと同じように、ビールにもまた、津々浦々の特産品が育っていくことが期待されます。

【写真】クラフトビール楽しめる店も増えてきた
  クラフトビールを楽しめる店も増えてきた photo by gettyimages

また、同じ銘柄を飲み続ける従来の飲み方に代わり、日本酒やワイン同様、複数のタイプを比較しながらビールを楽しむスタイルも徐々に定着してきています。お気に入りの個性派ビールをじっくり味わいながら、さまざまな食品との相性のよい組み合わせを見つけ出す「マリアージュ」探しも、これからのビールの楽しみ方の一つとなっていくはずです。

ビールは今、まさに「大変革の時代」を迎えているのです。