大阪北部地震を地震学者はどう見たのか

注目される慶長伏見地震との関係
遠田 晋次 プロフィール

直下型地震に備えるには

震源距離が大きくなると地震波も減衰するので、海溝型地震では市街地で極端に大きな揺れに見舞われることは少ないです(相模トラフや南海トラフ沿いの地震は、一部でプレート境界が陸地直下に位置するので、震度7も想定されている)。一方で、活断層による内陸地震は、直下から地震波が弱まることなく地表に到達します。そのため、震度7の地域が活断層周辺に生じることになります。

さらに、地震波の距離減衰は、波の種類によって異なります。地震波は、音楽と同様に、周期の異なる多様な波の重ね合わせです。マグニチュードが大きいほど広い帯域(短周期から長周期)の波を放出し、小さいと短周期成分に偏ります。

一般に平屋や二階建ての住宅は、キラーパルスと呼ばれる周期1秒前後の波が卓越する地震波によって破壊される傾向があります。本来、戸建て住宅の固有周期(地震などによって片側に揺れて戻るまでの時間)は0.2秒前後です。そのようなごく短周期で共振現象が生じやすいはずなのですが、大地震の最初の一撃で建物がダメージを受けると固有周期が1秒まで延び、それが後続の揺れによる大破壊につながるようです。

このような比較的短周期の波は、震源距離が長いと、長周期に比べて著しく減衰するといわれています。つまり、海溝型地震による地震波は、内陸に到達する頃には短周期成分が衰えていることが多いのです(逆に長周期の波は、柔らかく厚い堆積層で増幅され、高層ビルの固有周期と同期する)。内陸地震の場合は、短周期成分も衰えずにそのまま地表に到達し、震源直上に被害をもたらします。

結果、内陸地震の場合、突然の揺れに備える時間がまったくありません。東北地方太平洋沖地震とその余震では、緊急地震速報が頻繁に流れました。緊急地震速報は、P波とS波という速度の異なる2種類の波と、全国約1000ヵ所に設置された地震計網を利用して、強い揺れが襲ってくる前に携帯電話、テレビ、ラジオなどで警報を発するものです。

たとえば、東北地方太平洋沖地震では、震度予測は外れましたが、速報から主要動の到達まで仙台で15秒、東京では1分も備える時間がありました。これは震央と東京が約350キロメートルも離れていたためです。

しかし、内陸地震の場合、顕著な被害をもたらす震度6以上の地域は通常震源域の真上にあり、速報が流れるタイミングは揺れが始まった後になります。机の下に隠れる、建物から飛び出る、といったアクションを起こす時間もありません。

こうしたことから言えるのは、内陸地震における対策は、不意の強い揺れから命を守ることだとわかります。最も重要かつ効果的な対策は建物の耐震補強でしょう。それしかないと言ってもよいくらいです。

  図5 今後30年間に震度6以上の揺れに見舞われる確率(地震調査研究推進本部、2016)と、1996年以降に発生したM6.5以上の内陸地震

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