老父がAV問題で警察沙汰…「性欲を解消できない」高齢者の悲劇

これは大きな社会問題だ
片田 珠美 プロフィール

親が罪を犯したらどうしよう?

こういう事件が起こって、警察から連絡がくると、家族は当惑する。とくに強い拒絶反応を示すのが娘である。

AVビデオを大音量で見ていた父親を病院に連れてきた娘も、「父がこんなことをするなんて。こういうことが二度とないように、薬で何とかしてください」と私に懇願した。「あまり強い薬を飲むと、眠くなるし、転倒して骨折することもあるので、薬で抑え込むのはお勧めできません」と私は答えたのだが、娘としてはそれだけ父親の性欲を受け入れられなかったのだろう。

娘の気持ちはよくわかる。高齢の父親にまだ強い性欲があり、しかも問題行動を起こしているとなると、受け入れられないのは当然だ。父親の性欲を消してしまえる薬があるのなら、それに頼りたいという気持ちになるのも無理はない。

ただ、高齢者の性欲を頭ごなしに否定し、汚いものでも眺めるような目で見つめて責めると、かえって逆効果になることが多い。まず、家族が落ち着くことが大切で、そのためには「性欲があるのは人間として当たり前で、別に病気ではない」という認識を持つべきだ。

 

性欲があることを受け入れたうえで

そのうえで、家族はどうすればいいのか、家族として何ができるのかを考えなければならない。まず、高齢者に性欲があるのはおかしいという考え方を捨てよう。男性である以上、性欲があって当然なのだから、AVや写真集などを見つけても非難しないでほしい。性に目覚めたティーンエージャーへの接し方と同様の対処法が求められる。

ただ、高齢者の性欲を受け入れたうえで、ダメなものはダメだと伝える必要がある。他人に迷惑をかけたり、警察沙汰になったりする場合は、我慢しなければならないと説明すべきだ。

とくに独り暮らしの高齢者の場合、寂しさから抑制がきかなくなっている例もある。だから、親自身が孤立しないように、家族で会う時間を増やすのも一つの手だ。あるいは、地域の人との交流を勧めるのもいいかもしれない。

精神科を受診することによって解決策が見つかることもある。精神科では、まず「脱抑制」の原因が何なのかを調べる検査をする。認知症なのか、加齢による脳の抑制機能の低下なのか。それとも、あきらめきれないのか。

原因がわかったら、それぞれの場合に応じて対処法を考える。薬を処方して一丁あがりの医師ではなく、何が親にとって幸せなのかを一緒に考えてくれる医師が望ましい。周囲の対処の仕方によって、問題行動が改善することも少なくないので、主治医と信頼関係を築きながら、対処法を工夫していただきたい。

当然ながら、あきらめきれない場合は、薬の処方もできない。上記のことを踏まえて、性欲と共にバランスよく生きる術を考えるしかないのである。