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日本の児童虐待対策があまりに的外れな「根本的原因」

これでは、救える命も救えない

児童虐待対策がもつリスク

安倍晋三首相は6月15日「虐待によって多くの幼い命が奪われている。政治の責任で抜本的な対策を講じ、子どもたちの命を守ることを第一に、あらゆる手段を尽くしてほしい」と述べ、緊急対策を取りまとめるよう指示、菅官房長官は会見で「児相間や自治体間の情報共有の徹底や関係者の連携強化を速やかに実施したい」と述べ、1ヵ月程度で対策をまとめる考えを示した(「安倍首相、緊急対策を指示」時事ドットコムニュース)。

東京都目黒区で起きた事件の悲惨さは言うまでもない。政府や政党だけでなく、国民の間でも「なんとかしたい」との声は広がっており、ネット上でもさまざまな個人や団体が政策提言を行なっている。

それらの提言の中心にあるのは「児童相談所の体制強化」と「警察との連携強化」が軸である。

たしかに、欧米等の子ども関係や虐待事案対処への予算額や、児童福祉司等の配置基準についての比較検討はわかりやすい。

だが、長年虐待やDVの現場を見てきた者として、そうした施策が持つリスクに関し警鐘の意味も含めて「日本から『児童虐待』が絶対なくならない理由といま必要な10の対策 結愛ちゃんと家族が求めていたもの」と題した記事を書いた。

 

元児童相談所所長からのメッセージ

記事が公開されると多方面から早速反応があった。そのうちのひとつは旧知の地方公務員からのメッセージだ。

彼はごく最近まで児童相談所所長だった。

メッセージは言葉を選びながらも、今回示されている一連の対処策に対して現場で咀嚼できない思いを端的に表現した内容となっている。

本人の了解を得て、全文を紹介しよう。

「さて、児童虐待防止の件。
人員増、職員の専門性の向上など児童相談所の体制強化は必要であることは否定しませんが、それより市区町村の意識高揚、体制強化が急務だと考えています。

平成16年児童福祉法改正で児童家庭相談対応が市区町村の業務として明文化されましたが、まだまだ丸投げ、取り次ぎ店レベルです。

しっかりと機能分担がなされなければ、児相は子育て支援レベルのショートステイから最重度の虐待対応まですべての相談通告に振り回され、いくら人を増やしても、砂漠に散水するみたいなものです。

街の開業医から総合病院に紹介状を書いてバトンタッチするように、基本的にまずは市区町村。法的な権限が必要な場合は、児相に紹介状(送致)とならねば、児童福祉司は疲弊する一方です。

目黒のケースは児相マターですが、区が一定の役割を果たせば、その分児相は今回のようなケースに特化して対応できるようになるはず。

例えて言えば、いつも風邪で救急車が出動し、真に必要な時には出払っていて救えた命が救えなかったという状況が常態化しています。

そこを市区町村に助言指導したくても、そこに人を割けないという悪循環で、いつまでたっても変わらないんですよね」