それでも日本人が「1ドル=100円割れ」の円高を警戒すべき理由

「円安世論」が見逃していること…
唐鎌 大輔 プロフィール

「円安期待論」の最大の問題点

巷で円安・ドル高を見通している向きの多くは「①FRBが利上げする→②米金利が上がる→③日米金利差が拡大する→④円売り・ドル買いが活発化」するというロジック一点張りに見受けられ、それ自体はシンプルで分かりやすい。

確かに、日米金利差が拡大し続けるにもかかわらず円売り・ドル買いが盛り上がらないなどということは考えにくい。いつかは堰を切ったように対外投資が加速する臨界点が訪れよう。

しかし、このシンプルなロジックの最大の問題点は②の弊害をまったく考慮しないことにある。

本来、金利上昇は株価のバリュエーション上も、実体経済の成長上もマイナスである。ここ数年、ゴルディロックス(適温)経済などというフレーズが持て囃される中でその基本的な事実が見過ごされてきたが、利上げの本懐は景気減速である。

実際、今年2月以降、株式市場は断続的に米金利上昇を理由に値を下げる営業日が見られ始めている。昨年、このような動きはほとんどなかった。米国の実体経済への影響は今のところ軽微だが、それはこれまでは実質ベースで見た政策金利(FF金利-インフレ率)がマイナス圏にある「正常化」の過程だったからであり、これからプラス圏に入る「引き締め」となって来れば話も変わってこよう。

 

ドル全面安で1ドル=100円割れへ

現状、米経済は+2%弱と目される潜在成長率を大幅に超える+3%弱(2017年通年では+2.6%、2018年1~3月期の前期比年率は+2.8%)で走り続けているため、こうした高い成長率が持続可能かという目線も合わせて持ちたいところである。

また、仮に米経済が金利上昇に耐えられたとしても、国境を越えた資本移動がこれほど当たり前になっている現代の金融市場において、淡々と自分(FRB)だけが利上げし続けるのはやはり難しい。基軸通貨ゆえに、その資本コスト上昇の影響はどうしても自国外、特に新興国からの資本流出を促してしまう。5月、アルゼンチンやトルコなどの混乱を見たばかりだ。

ちなみに、国際金融協会(IIF)の集計に基づけば、新興国におけるドル建て債務の償還額は 2018 年より 2019 年のほうが大きい。米金利高・ドル高の悪影響は今後ますます懸念されるものになる。

かかる認識の下、筆者は「今後1年以内に金利上昇が米国内外の経済のオーバーキルに繋がり、FRBの利上げは挫折。米金利およびドルが低下基調となる中で円高も不可避」という想定を抱いている。

実質実効レートで見た円相場が20%以上割安で長年放置されているという事実を踏まえると、ドル全面安が訪れた場合、少なくとも対ドル相場が100円割れを臨む展開となってもまったく驚きではないと考えている。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

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