それでも日本人が「1ドル=100円割れ」の円高を警戒すべき理由

「円安世論」が見逃していること…
唐鎌 大輔 プロフィール

インフレ期待は頭打ち

次に、名目金利が上昇するかたわらでインフレ期待が頭打ちとなっている事実も見逃せない(以下、図)。

これは来るべき物価上昇やこれと平仄の合う「利上げの終点」に対して期待が盛り上がっていないことを意味している。少なくともこうした穏当なインフレ期待の下でイールドカーブが右上がりの形状を取り戻してくるとは考えにくく、上で説明したフラット化傾向に大きな変化が起こることはなさそうである。年初から原油価格が上昇してもインフレ期待が横這いであったことも印象的だ。

実際、米国の平均時給は堅調であれども加速する兆候はない。

確かに米雇用統計も非農業部門雇用者数という「量」は前月比で増勢を維持しているが、それでも限界的に積み上げられる「量」はいつか失速する。すでに年間で見れば、2014年の前年比+301万人をピークとして2015年は同+271万人、2016年は同+234万人、2017年は同+219万人と水準は確実に切り下がっている。

「量」が尽きる前に「質」である賃金に点火するかが注目されるわけだが、現状ではその兆候はまだない。こうした状況だからこそ、インフレ期待が高まるには至っていないのだろう。

 

以上に見るようなイールドカーブやインフレ期待の現状から察するに、金融市場は足許の米金利上昇の要因を労働市場のひっ迫に応じた賃金インフレやこれに応じた一般物価の上昇といった「安定的かつ良性の動き」に求めていないように思われる。

考えられるとすれば、前年比で見た原油価格上昇や米債増発懸念など「一時的かつ悪性の動き」にその原因を求めているのではないか。それはやはり「良い金利上昇」ではなく「悪い金利上昇」である。

かかる認識の下、どのような円相場見通しを持つべきか。

編集部からのお知らせ!

関連記事