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それでも日本人が「1ドル=100円割れ」の円高を警戒すべき理由

「円安世論」が見逃していること…
いまマーケットでは円安機運が高まっている。6月13日からの週にFOMC(米連邦公開市場委員会)が利上げを決めた一方、日本銀行がマイナス金利を維持したことで、日米金利差の拡大から「円売り・ドル買い」を加速するとの思惑が広がっているからだ。

市場では1ドル=120円に向けて動き出すと威勢のいい声も聞こえてくるが、鵜呑みにするのは危ない。じつはこの「円安世論」が、ある重大な問題点を見逃していることをご存じだろうか。

みずほ銀行国際為替部チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏が緊急寄稿で警鐘を鳴らす。

「良い金利上昇」か、「悪い金利上昇」か

4月以降、金融市場では米10年金利の上昇が大きなテーマとなった。

5月には安定的に3%の大台で推移するようになり、ドル/円相場もこれに追随する地合いが見られた。本稿執筆時点でも1ドル=110円台を何とか維持している。もちろん、米金利上昇が好調な米国経済に裏付けられているのは事実なのであろうし、その点で言えば円安にも違和感はないかもしれない。

だが一方、見逃せない2つの現象も気にしたい。1つが米国のイールドカーブ(利回り曲線)のフラット化、もう1つが米国のインフレ期待の低迷である。

現下の金利上昇はそれが「良い金利上昇」なのか「悪い金利上昇」なのかということが争点になりがちだが、これら2つの現象を見る限り、筆者は「悪い金利上昇」の疑いが捨てきれないと考えている。

今後のドル/円相場見通しを検討する上では、こうした米国の金利・物価情勢やこれと大きく関連するFRBの金融政策の現状や展望が要諦になるので、今回の本欄ではこの論点を掘り下げてみたい。

 

イールドカーブに異変

まず、イールドカーブのフラット化。

6月12~13日に開催されたFOMCはFF金利の誘導目標を25bps引き上げて、1.75~2.00%とすることを全会一致で決定した。

いよいよ2%台となった政策金利であり、そろそろ「低金利」と言うのも難しい水準に入りつつある。2015年12月から数えて計7回の利上げを敢行しているFRB(米連邦準備理事会)の政策運営は好調そのものにも見えるが、利上げに応じてイールドカーブが浮揚する結果にはなっていないのだ。