6月12日と13日の連邦公開市場委員会(FOMC、米国の金融政策を決定する会合)では、政策金利を0.25ポイント利上げることが決定された。これは想定された通りだ。今回、FRBは今後の経済や政策金利などに関する参加者の予想も公表した。それによると2018年にはあと2回、翌2019年には3回の利上げが予想されている。
今回のFOMCに関して、最も注目すべきは2019年の金融政策だ。0.25ポイントずつ利上げが行われると、今年末の政策金利の上限水準は2.50%に達する。年明け以降も複数回の利上げが行われると、米国の金融政策は本格的な引き締め局面に入る。それは、連邦準備理事会(FRB)が、金融緩和の“のりしろ”の確保を目指していることを意味する。
米国の経済は堅調に推移している。労働市場の改善により、飲食や建設、製造業、小売りなど幅広い業種で人手不足が発生している。トランプ減税という企業業績への追い風も重なり、賃上げによって人手の確保を目指す企業は増加している。今すぐに景気が減速するリスクは抑制されており、2019年の前半ころまでは緩やかな景気の回復が続きそうだ。
FRBは、物価の安定を目指しつつ、回復のペースを持続させたい。それを考える重要な理論が、“自然利子率”だ。自然利子率とは、景気を過熱させることも、減速させることもない、中立的な実質利子率をいう。自然利子率は、中立利子率や均衡実質金利と呼ばれることもある。
噛み砕いていえば、自然利子率は、企業が設備などに投資をする際に予想されるリターンに相当する。なお、自然利子率は推計によって算出され、前提条件によってその水準は異なる。
FRBによると、現状の経済環境を基に長期的な見通しを立てた場合、経済に対して中立的な政策金利の水準は2.9%だ。これは、自然利子率の水準を表している。年内、あと2回の利上げが行われFFレートの上限が2.50%に引き上げられても、金融政策は緩和的だ。なぜなら、政策金利の水準が自然利子率を下回っているからだ。前回から比べた場合、年内の米国の金融政策の運営方針が大きく変わったとは言えない。
FOMC参加者の政策金利見通しをもとに考えると、2019年の金融政策は引き締められる可能性がある。つまり、政策金利が自然利子率のあるべき水準を上回る可能性がある。13日の記者会見にてパウエル議長が『比較的早期に政策金利は中立金利の水準に達する可能性がある』と述べたのは、このことだ。従来に比べ、FRBのタカ派姿勢は強まったといえる。