「近代民主主義」はいつ始まり、どこに着地しようとしているのか

そこから見えてくる今日的危機とは
正村 俊之

近代の社会科学は、機能分化の構造に即して配置されている。

例えば、政治学や経済学は、それぞれ機能分化をとげた政治システムや経済システムを対象にしている。社会科学は、機能分化の成立条件を十分に問うことなく、最初から前提にしてきた。

ならば、その機能分化の成立条件を掘り起こし、それが今日揺らいでいることを明らかにすれば、機能分化の変容を説明することにつながるのではないか。

 

主権の二千年史』(講談社選書メチエ)は、近代民主主義を扱っているが、このような問題意識のもとに書かれた。近代民主主義は、近代社会のなかで機能分化をとげた政治システムとして確立された。

この政治システムは、機能分化の一環としてどのように形成され、どのような機能分化の変容のもとで危機に陥ったのか──これが基本的なテーマである。

本書は、織物に喩えれば、タテ糸とヨコ糸で編まれている。タテ糸として、歴史的には近代以前まで遡った。西欧中世社会は、民主主義とは無縁のスタティックな社会と思われがちだが、近代社会とは違う意味でダイナミックな社会である。

本書は、近代民主主義の起源を古代ギリシアではなく、キリスト教に支配された中世社会に求め、そこから今日に至るダイナミックな過程を追った。

一方、ヨコ糸となったのが、他の機能システムとの関係であり、特に注目したのが経済システムとの関係だった。近代社会のなかで機能分化した経済システムが、近代資本主義である。

近代民主主義と近代資本主義は、いわば双子のような存在であり、その形成と変容には意外な共通点がある。そうしたシステム間の内在的な連関を浮かび上がらせてみたかった。

本書を執筆するにあたって、さまざまな学問分野を渡り歩いたが、この旅をなんとか終えることができた。

読書人の雑誌「本」2018年7月号より