大島賢治くんインスタグラムより

「韓国人になりたい」日本男児(ナムオル)いつの間にか増殖中の怪

K-POPへの偏愛とストイックな生態

K-POPアイドルに「寄せる」男子たち

2枚の写真を見比べてみていただきたい。1枚目は、ある日本の青年が自身のインスタグラムに載せたものだ。明るい色の髪、力強い目線を強調したメイク。コメントには「ゆんぎメイク練習中なり」。ゆんぎとは、K-POPアイドルグループ・防弾少年団のメンバー、SUGAの本名だ。確かに、SUGAの写真(2枚目)を彷彿とさせる。

大島賢治くん。神奈川県出身。シュガに寄せる時は髪を短くするのがポイント
防弾少年団・SUGA(防弾少年団公式インスタグラムより)

最近、韓国好き女子の間で、彼らは韓国語の「ナム(男)」と「オルチャン(顔がきれい)」の省略形を合わせ、「ナムオル」と呼ばれている。(ちなみに本場韓国では「ナムオル」という言葉は存在せず、日本オリジナルの造語)。

『インスタ女子の間で「#韓国人になりたい」流行中の意外と深イイ理由』という記事を書いてから半年。今、原宿や表参道などのオシャレスポットには韓国人っぽいメイクや服装の女の子が普通に闊歩し、コリアンタウン・新大久保は駅に入場規制がかかるほどの活気を帯びている。

そんな中、新たな異変を感じたのは、今年2月のことだった。

「K-POPアイドルグループのメンバーがこんなところに!?」

東京・渋谷マルイの前を歩いていたとき、ひときわ目を引く男子2人組とすれ違った。年齢は10代後半から20代前半ぐらい。明るい色に染めたマッシュルームカットの髪、アイシャドウや赤いティントでメイクした顔、黒いロングコートにスキニーパンツ。

来日したK-POPアイドルが、東京でオフの時間に行きたい場所の筆頭として挙げるのが渋谷、原宿界隈だ。「もしや、K-POPグループのメンバー!?」と、こっそりマジマジと眺めるも……該当者ナシ。どうやら一般人のようだった。

ふと見渡すと、街にちらほら点在する「韓国人になりたい」風の男子たち。

なぜ今、ナムオルが増えているのだろうか。そして、彼らが目指しているものとは? 彼らに話を聞いてみた。

 

インスタフォロワー19万人超えのナムオル

「防弾、来ましたよっ!」 

豊洲の海が見えるカフェの入り口に彼が姿を現した時、同席していた編集者に思わず小声でささやいた。大きめの白いフード付きパーカー。深めに被った黒いキャップとマスクの間から覗くやや切れ長の目が、人気K-POPアイドルグループ・防弾少年団のVにそっくりだ。

冒頭の写真の大島賢治くん、21歳。フォロワー数19万人超を擁する、人気インスタグラマーだ。黒いマスクをつけた斜め45度の写真は、33,779いいね!を獲得。インスタグラムの投稿は、写真によって防弾少年団の「V」と「SUGA」という2人のメンバーに酷似している。つまり、角度やファッション次第で、異なる顔を見せるヤヌス的魅力の持ち主なのだ。

防弾少年団。右端がV、右から3番目がSUGA。photo by gettyimages

インスタは、日によって「Vっぽいファッション」と「SUGAっぽいファッション」を使い分けて載せると言う。

「きれいになりたいときはV、クールな気分の時はSUGA。自分の中の彼らに対する愛情の分量によって変わります。寝る前にパッと決めて、次の日からやり始める。フォロワーさんからは、『目元はVだけど、顔全体の雰囲気はSUGAに似てるね』って言われます」

ナムオルファッションを意識したのは、去年の6月ぐらいのことだった。

「友達が防弾少年団にハマっていたので、どんなグループか気になって『血、汗、涙』とかの曲を聴き始めたら、どんどんのめり込んで。僕が好きなメンバーは、Vなんですけど。あまりめちゃイケメンじゃなくて、美しい系のイケメンっていうか。直感でこの人だ、って好きになりました」。

飲食店で働く賢治くんは、ある日お客さんに「Vに似てるね!」と言われたことをきっかけに「じゃあ、Vに寄せてみようかな」と思い始める。「子供の頃は仮面ライダーが好きで変身ベルトを集めたり、高校時代はUVERworldのボーカルTAKUYAに憧れて同じ服を買ったり。熱中するとマネする癖がある」という賢治くんは、ネット上でVの画像を探し集めて研究するようになった。