士官候補生の青春、防衛大学校「卒業ダンスパーティー」に潜入!

「アカシア会」の伝統をご存知か
伊藤 明弘 プロフィール

ダンスの思想は、幹部自衛官の心得に通ず

アカシア会部長・中澤信一2等海佐にインタビューしたところ、ご自身のモットーは「若いうちは何事も経験」であるという。そして、「明るく楽しく一所懸命」。その心は、キツい任務を遂行するときにも、顔は笑って、明るく、自分の持ち場で頑張って、任務を楽しむ心の余裕を持とうという意だという。近年、増加している災害派遣等では「真心を尽くせ」という意味もあるそうだ。

[写真]アカシア会部長の中澤信一2等海佐(写真提供:伊藤明弘氏)アカシア会部長の中澤信一2等海佐(写真提供:伊藤明弘氏)

また、防衛大学大隊首席指導教官時代の教えは、「らしくあれ」だったという。「自分らしく、防大生らしく、士官候補生らしく」。その基準は「自分の目線ではなく、他人から、あるいは国民からどう見られているかを考えて、期待される防大生らしい立ち振る舞い、生き方をしなさい」という崇高な使命感であったそうだ。

 

絢爛豪華、華やかな「アカシア会」の世界だが、苦労していることもある。社交ダンスではいくつもの衣装が必要になるが、買い揃える予算がないことだそうだ。先にも触れたように、会の運営は、学生たちが貯めた資金でまかなわれているので、厳しいところだろう。

一方でメンバーの雰囲気については、「積極的で先輩相手にもダンスの練習指導もするので、とても礼儀正しく、リーダーシップも備わってきていると思います。姿勢も良く堂々とした立ち振る舞いは指揮官に理想像だとも言えます」と語る。今後は「他大学との合同練習も行いたい」とのことだった。

学生メンバーたちは、どんな人々なのか。別日に、アカシア会のメンバーが取材に応じてくれたので、その声をご紹介しよう。

[写真]インタビューに応じてくれたアカシア会のメンバーたち(写真提供:伊藤明弘氏)インタビューに応じてくれたアカシア会のメンバーたち。写真左から佐々木学生、酒井学生、中川2等陸尉(写真提供:伊藤明弘氏)

女性初のアカシカ会理事(主将)を務める佐々木学生(海上要員)は、メンバーの教育に力を入れたいと話すが、それもそのはず「小学校時代からクラシックバレエを習っており、テクニカル面からパフォーマンスの向上を目指したい」という本格派だ。部員たちが「10種類は踊れるようにしたい」と意気込む。

「社交ダンスは常に相手の事を考えているので、それは部下の事を考える幹部自衛官に通じる点も多い。数十㎝単位で艦艇を操る観艦式のような習熟した姿を国民に披露したい」そうだ。

主務(マネージャー)の酒井学生(航空要員)は、「まったくの初心者から始められるのが社交ダンスの魅力」だと語る。バレーボール部も兼任していたが「社交ダンスに魅了され、いまはアカシア会のみで活動している」とのこと。

社交ダンスの醍醐味は、「たとえばステップが速くなっていく相手をコントロールして修正を図る点」にあると言う。酒井学生はパイロット志望で「社交ダンスで体得したものをブルーインパルスの展示飛行で示せたら」と熱く語ってくれた。佐々木学生とともに週に一度、民間のダンススクールにも通っているという。

[写真]ダンスパーティーでも、アカシア会のメンバーのパフォーマンスは異彩を放つすばらしさだった(写真提供:伊藤明弘氏)ダンスパーティーでも、アカシア会のメンバーのパフォーマンスは異彩を放つすばらしさだった(写真提供:伊藤明弘氏)

アカシカ会OBで、現在は研究科(修士課程)学生の中川2等陸尉は、「ダンスでは、自由ななかにもコミュニケーションと適応力が求められ、決められたステップがズレないように腐心した」と語り、「卒業ダンスパーティーで思い出のあるOBと話すのも楽しい」という。「社交ダンスは、毎年行われる富士総合火力演習で精緻に表現される模範演習のようです」と締めてくれた。