バブル絶頂から崩壊まで、激動の10年間にはこんな新書が生まれた!

講談社現代新書の歩み〈3〉
講談社現代新書の創刊から現在までの歴史を振り返る「現代新書の歩み」。第3回で扱う1984~93年は、バブル経済の絶頂からその崩壊へと、日本経済が天国から地獄へと転落した“激動”の10年間でした。
現代新書からは、『新しい〇×』『はじめての○○』シリーズや、時事的なテーマの入門書が人気に。また、この時期に刊行された哲学や思想・世界史など普遍的なテーマの書目は、現在に至るまで長く読み継がれています。

日本経済、「激動」の10年間

元号が昭和から平成へと移り変わる一方、「名画あさり」などとその金満ぶりに世界中が眉をひそめるほど、わが世の春を謳歌したはずの日本経済が、天国から地獄へと転落──。1984年から93年までの10年間の世相を一言で表すなら、「激動」というキーワードこそがふさわしい。

1983年12月、9893円で取引を終えた日経平均株価が84年1月に初めて1万円を突破すると、89年12月の大納会でつけた史上最高値(3万8957円)まで、右肩上がりに上昇した。地価の高騰を背景に人々が好景気に酔いしれた「バブル経済」である。

ところが、翌1990年8月に3万円を割り込むと、以後、二度とその大台を回復することはなかった。それは一時6000円台に下落し、今なお抜け出せていない「失われた二〇年」へと突き進む、戦後日本最大ともいえる一大転換期の象徴でもあった。

出版界は下降期に入り、1984年の8億8449万冊から上昇を続けた書籍の推定販売部数は、バブル景気絶頂目前の88年の9億4379万冊をピークに、その後は下降線をたどり続けた。

この時期に大ブレイクした作家として、近年ノーベル文学賞の候補に名前が挙がっている村上春樹がいる。1987年に発売された『ノルウェイの森(上・下)』(講談社)と、『ダンス・ダンス・ダンス(上・下)』(同)がベストセラーの上位に食い込んだ。

1989年、空前絶後のベストセラー独占が起きる。〝戦後思想界の巨人〟吉本隆明を父に持つ吉本ばなな(現よしもとばなな)による『TUGUMI』(中央公論社)、『キッチン』(福武書店)をはじめ、合計500万部という純文学の世界では常識破りの売れ行きを記録した。

1991年から1992~93年にかけては、テレビ番組の単行本という出版界における新たなジャンルの書目がベストセラー入り。「笑っていいとも!」の人気コーナーを書籍化した91年の『タモリ・ウッチャンナンチャンの世紀末クイズ』(扶桑社)などがランクインを果たした。

 

シリーズの幅を広げた現代新書

過去50年間に2200冊以上刊行されてきた現代新書のタイトルには、『世界の○×』(9冊)、『新しい〇×』(8冊)、『教養としての○×』(5冊)、『最強の○×』(5冊)というように、いくつかのテーマが見られる。

そうした中でも特に多いのが、橋爪大三郎『はじめての構造主義』に代表される、『はじめての〇×』シリーズ(33冊)である。

最初の渡辺吉鎔『はじめての朝鮮語』こそ1983年の発売だが、以後2013年までに刊行された32冊中、じつに半数以上(17冊)が1984年から93年までに刊行されており、『はじめての〇×』シリーズはこの10年間の現代新書における大きな特徴の一つといえる。

内容も多岐にわたる。たとえば芸術ものには、

内藤遊人『はじめてのジャズ』
黒田恭一『はじめてのクラシック』
堀内修『はじめてのオペラ』
古山俊一『はじめてのシンセサイザー』

などがあり、語学ものとして、

相原茂『はじめての中国語』
福本義憲『はじめてのドイツ語』
中沢英彦『はじめてのロシア語』
篠田勝英『はじめてのフランス語』

さらには、竹村牧男『はじめての禅』、田辺洋一『はじめてのヒアリング』といったものまで様々である。