韓国から狙われている日本の「知的財産」を守る「最も簡単な方法」

1100億円の損害も
正林 真之 プロフィール

日本に足りない知財戦略を補うためには…

2020年以降の本格的な高齢化社会の到来に対して、国家レベルでの知財のマネタイズは、最も緊急度の高い必須課題のひとつに違いない。そこでは、企業間、産業間を越えた日本国としての知財戦略が求められる。

経済戦争などという言葉を使いたくはないが、トランプ政権のアメリカ・ファーストによる関税率増大とその対抗措置を巡る中国やEUの動向。戦々恐々とその戦況をただ傍観者のように見守るその前に、日本の国家的な知財戦略立案が不可欠なのだ。

では、どうやれば戦略を立てられるのか。まるでスパイ映画のような大きな戦略かと思うかもしれないが、一番大切なのは「企業や社員の長所を見つけること」だ。

 

クラス全員の長所を挙げていくという小学生の授業がある。まるでこの授業のようだと笑ってはいけない。それこそが冒頭に述べた「価値が分かるか否か」ということなのだ。

欠点を指摘することはとても簡単で、誰もが名人芸的にうまい。欠落していることはわかりやすいからだ。しかし、長所を挙げろというと難しい。そうなると、「長所をのばせ」「長所を守れ」といっても、何を伸ばせばいいか、守ればいいのかがわからない。

我々弁理士の仕事は、その企業やクライアントの長所を見極め、マネタイズすることも大切なひとつである。そのためにも、私の事務所では会議のたびにお互いの長所を挙げていく。「良い所を見つける」トレーニングを行うのである。もちろん長所を言われたら言われたほうがも嬉しいので、所内の雰囲気も明るくなる。

つまり、どんな小さいと思うことでも「会社の良い所」「会社にいる人材の良い所」を挙げていくのだ。良い所を挙げることで、それが財産であることに気づき、特許を取得する、人材確保のための対策を取るなど、「知財を守る」ための戦略を練ることができる。あって当たり前のものだと思って軽視していたがゆえに、会社の財産であった人材が去って裏切るということも起こらなくなるだろう。

サムスンとアップルの知財を巡る争いを、三面記事やワイドショーを見るような眼で見ていていいのか。ポスコと新日鉄の特許紛争を、日本の勝利としてほくそ笑んでいていいのか。決してそうではない。まずは目の前に当たり前のようにしてある「財産」の価値を見極めること、そこから知財戦略は始まるのである。

正林真之 しょうばやし・まさゆき 1998年に弁理士として独立し、現在の正林国際特許商標事務所の基盤となる事務所を設立。弁理士会副会長も務める。知的財産のエキスパートとして現場で活躍しながら、弁理士養成の講師も続けてきた。音楽の知的財産をモーツァルトとプッチーニはどのように使用したのか? という入り口から、国内外で見られる知的財産の使用例をまとめた『貧乏モーツアルトと金持ちプッチーニ』が発売中。