韓国から狙われている日本の「知的財産」を守る「最も簡単な方法」

1100億円の損害も
正林 真之 プロフィール

あるのが「当たり前」になると守れない

ここで疑問なのが、新日鉄は元社員たちと彼らが持っている技術を自分たちの「財産」だと認識していただろうかということだ。

訴状で「実行犯」と名指しされた元新日鉄社員たちは、1980年代後半から1990年代半ばに新日鉄を退社した技術者たちで、中には賞も取っている人もいた。しかしどんな優れた発明をしても、会社からは特許1件につき数千円程度の手当だけしか支払われておらず、決して優遇されたわけではなかったようだ。

新日鉄からしたら、「膨大な研究費を払っている」などの言い分はあるだろう。しかしそれぞれの言い分があるとはいえ、「知財が流出した」事実は明らかだ。損害では1100億円にも及ぶという。幸い、技術には特許を取得しているため賠償金を得ることはできたが、それも偶然盗まれていた事実がわかったゆえである。

盗まれていたことすら認識していなかったのは、流出した技術を持った「技術者」そのものに対して軽視していたからでもあるのではないだろうか。社員として雇ったことで、その技術者が存在していることが「当たり前」になっていたことは間違いないだろう。

自社の技術を守るのは、あくまでその企業自身であることは言うまでもない。

技術流出で競争力を失う事態を防ぐためにも、知財保護に対するプロフェッショナルな対策が欠かせない。そして保護するためには、「何が会社の財産なのか」を認識する必要がある。

 

法外な条件で韓国が狙う「生きた知財」

週末になると、韓国行きの飛行機に日本の企業の技術者達が大挙して乗り込み、韓国の企業に“アルバイト”に出かけているなどということがまことしやかに囁かれていたことをご存じだろうか。

高い技術力を持つ日本の技術者達が、日本の企業が長年培ってきた貴重な知的資産である日本企業の独自技術を、サムスンをはじめとする韓国企業に、高額の“バイト料”で教えていたというのだ。その“アルバイト代”が100万円であろうが、1,000万円であろうが、実は1億円分のことを教えていたかもしれない。

韓国サムスングループでいえば、日本人技術者ヘッドハンティング攻勢も有名だ。多額の日本企業と一桁違う年収はもちろん、転職に伴う数千万円の契約金、専属秘書、運転手付きの車、豪華なマンション、日本への帰省費用、そして家族の韓国への招待まで、まさに至れり尽くせりの“ニンジン”に、心が動かぬほうがおかしいとさえ思えてしまう。

もちろん、サムスンが欲しいのはその技術者ではなく、その技術者の頭の中にある技術という知的資産にほかならない。こうして、巧妙かつ大胆に、日本が世界に誇る技術の数々が公然のごとく韓国に流出しているのだ。

 技術を教えていることに関して、日本人技術者も自分が価値あるものを与えているということに気が付いていないはずはない。その価値に対して、日本が、自分の企業がきちんと対価を払ってくれているか、そして尊重してくれるかを見て、より良い条件のところに転職しただけなのだ。日本で情報が欲しいサムソン側は、何が欲しいかということが明確にわかっており、その価値も十分に認識している。「自分の価値をわかってくれるところに行く」のは理にかなったことでもある。

実は、日本の知財管理の一番の問題点はここだと思う。つまり、何がこの国にとっての財産なのかを、きちんと認識していないことなのだ。現実には、知財の海外流出による、何百億円もの利益の海外流出が起きていることは意外なくらい認識されていないのだ。