韓国に二百億円が奪われた?「苺事件」に見る知財戦争の過酷な現実

日本の財産を守るためにすべきこと
正林 真之 プロフィール

主張だけで終わりかねない

そして、農林水産省は、日本のイチゴ品種が韓国へ流出したことで「5年間で最大220億円の損失」という試算を発表し、この「220億円の損失」という言葉が一人歩きしていったのだ。

この「220億円の損失」という数字はどこから出てきたのだろうか。

「農林水産省における知的財産に係る取組 」と題された資料がある。この資料中「農林水産物に係る知的財産の国内外での保護 」というページの中で、「韓国のいちご輸出による日本産 いちごの輸出機会の損失は 5年で最大220億円(推計)(※韓国のいちご輸出量4千トン/年が日本産 に代替されたとして試算 )」とし、「日本の農業関係者は海外での育成者権保護の必要性に気づいていない」と指摘されているのだ。

さまざまな報道では、韓国のイチゴ栽培面積の9割以上が日本の品種をもとに開発された品種であり、日本の品種が韓国で育成者権を取得できていれば、現在でもいちごのロイヤリティ収入を獲得できた可能性があると言われている。

韓国は、これらの品種のイチゴをアジア各国に活発に輸出しているので、そこには韓国産イチゴ輸出を日本産で代替できていた可能性も含まれるだろう。

その真偽や解釈は様々だろう。日本では、農作物の権利を守るべく、「品種登録制度」が法律で整備されていて、通常25年間は使用料を取ることができるが、韓国国内で不法に栽培されてしまったイチゴ品種はまさに無断栽培し放題という無法地帯なのだ。しかしながら、その後、この「220億円の損害」の賠償問題等の話は一切聞かない。

この日本と韓国のイチゴ騒動、結局はうやむやなまま忘れ去られていってしまうのだろうか。いや、本当はこの問題を機に、「日本の知的財産権」をどう守るかを今こそ考えなければならないのだ。

 

商標登録で利益を守った日本の実例

日本国内に目を向けてみると、「知的財産権」についてあながち悪い事例ばかりとは限らない。

たとえば、浜松や静岡方面に出張に出かけた帰りに決まって持ち帰るお土産「うなぎパイ」も、この商標が登録されていることで一人勝ち状態を保っている。当然のことながら、類似の商品も多数販売されてはいるが「うなぎパイ」という商標がある限り、その圧勝は揺るぎようがないだろう。

もはや「うなぎパイ」という商標、つまり名前自体がお菓子の美味しさの一部になっているので、名前の違う類似商品をお土産に持って帰ってもがっかりされてしまうだろう。

「うなぎパイ」の類似品追随を許さない背景には、商標登録が必須だった 「春華堂」HPより

同様に、同じみかんでも「有田みかん」というだけで、その希少性は何倍にも跳ね上がる。

みかんといわれても積極的に食べたいと思わないのに、「有田みかん」と聞くと途端に高級なイメージに早変わりする。

しかしこれは、「地域団体商標」という「地域名+商品名等」の組み合わせからなる「有田みかん」の登録商標を「ありだ農業協同組合」が権利者として守り続けているからなのだ。つまり、国内での商標も利権を持つ場所が一致団結しないと商標は守れない。商標をはじめとした知的財産を守るには、対海外でも国内の権利者が一致団結して対策を練る必要があるのではないだろうか。