王貞治・78歳の再婚に「財産分与」の難問

美談だけではすまない
週刊現代 プロフィール

すでに土地は処分

だが、家族の理解が得られたとしても、シニアの再婚において、最大の難問は財産分与である。遺産の法定相続分は、再婚でも配偶者の相続分が2分の1となる。これを実子が快く思わないケースは多い。さらに問題となるのが、後妻(継母)が亡くなったときだ。

これは仮定の話だが、王氏の財産の半分を相続した後、Nさんが亡くなった場合、Nさんの法定相続人は、彼女の実子3人であり、王氏の娘3人には何の権利もない。つまり法定相続分でいえば、王氏の娘3人とNさんの実子3人の取り分が同じということになりうるのだ。

間接的とはいえ、「世界の王」の財産を赤の他人が相続する権利を持つことは、後々トラブルにつながりかねない。

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本誌は目黒区にある、王氏が所有する一軒家を訪ねた。ところが、約500平方メートルの敷地に立つ豪邸は姿を消し、更地になっていた。'73年に購入し、家族の思い出が詰まった土地を、王氏は今年1月に売却していたのだ。

「相続争いのタネになりうる土地を入籍する前に処分しておこうと考えたのだと思います。いま住んでいる港区内の自宅も分譲ではなく、高級賃貸マンションです。

また、王さんが代表を務める個人事務所は、理恵さんと長女が取締役を務めており、Nさんは役員に入っていません。事務所が所有する資産は娘たちに今後も管理してもらいたいということでしょう。

ただ事務所名義である福岡のマンションは、ゆくゆくはNさんの名義に変えたいと思っているかもしれません」(前出・知人)

 

娘とNさんに気を遣ったうえで、王氏は、「男のけじめ」を決断したのである。王氏の従兄弟で、都内で洋食屋を営む川口俊幸さんはこう言う。

「彼のことだから、相続のこともしっかり考えているんじゃないかな。自分のためにガツガツおカネを使うということは考えない人だよ。表には出さないけれど、寄付もかなりしていると思う。

家族のために残すものは残しながら、困っている人のためにおカネを使っている感じだろうね」

王氏自身は本誌記者の問いかけにこう話した。

――再婚はしがらみが多くて大変でした?

「そんなことはないですよ。最終的には僕が決めることだというのは前から言っていましたから」

――やはり「男のけじめ」ということですか?

「まあ、もう十何年も世話になったからね。あとは、ゆっくりゆっくり歩いていきますよ」

愛情だけでは熟年再婚はできない。王氏は見事にやり遂げた―。

「週刊現代」2018年6月23日号より