日本から「児童虐待」が絶対なくならない理由といま必要な10の対策

結愛ちゃんと家族が求めていたもの
井戸 まさえ プロフィール

5点の追加対応策

こうしたことを踏まえながら、私は玉木国民民主党共同代表の5点に加えてさらに5点を提案したい。

6. 役所の窓口の対応に対して対抗できる知見を持った民間団体との連携
7. 子どもを持つ家庭の失業対策
8. 地方自治体が独自で施策を行なうことを国や都道府県が妨げないこと

実は、地方自治体が独自判断で相談者を救おうと思っても、国や都道府県に確認を取った段階で「NO」となるケースがあるのだ。

 

例えば現在筆者が関わる荒川区に在住する7月で50歳になる無戸籍者のケースはその典型でもある。先般NHKの「おはよう日本」でその姿が放映されたので見た方もいるであろう。

両親が出生届を出さないまま死亡し、49歳に至るまで無戸籍のまま、建設現場等で働きながら生き延びてきた男性に対して、当初相談に行った足立区では区内に空きがなく荒川区の施設を紹介し、男性はそこに住むこととなった。

しかし、荒川区は住民であることを認識しているにもかかわらず男性を住民登録しない。マイナンバーカードが導入され、番号の提示がなければアルバイトさえ難しい現状を踏まえ、住民登録を望む当事者に対して、総務省の回答や東京都が示す問答集にはそうした手続きを可としていないというのが理由である。

総務省に聞けば、区は独自判断して住民登録をしてもなんら違法ではない、と言う。しかし荒川区はそれが明文化されて示されない限り、独自で判断はできないと言う。

総務省は明文化するまでもなく、地方分権一括法が成立以来「通知」は単なる指導的意味があるだけで、あくまで判断は自治体。そもそも法律にそう明記してあると言い張る。

だが、現実には国の通知や、東京都が定めた施行マニュアルを飛び越えて、福祉現場の担い手である地方自治体が動くことはなかなか難しい。

現場の人がいくら手助けをしたくとも、管理職が揃った会議では「前例がない」と言ったことで、支援は見送られるのだ。

そして死亡事故が起こってはじめてこうしたことも可視化される。

逆に、事前に、未然に最悪の事態が回避されていれば、死者が出ていなければ「大したことはない」と問題は見て見ぬ振りをされ、解決策も示されない。

つまりは解決したかったら、「死ね」ということとも取れる。

〔PHOTO〕iStock

9. 「個別ケース」こそ大事。この困窮者ひとりをいかに助けられるかを考える

役所は「原則」と「例外」を持ち出し、この人だけの「個別ケース」で対応はできないと言う。しかし、実は「個別ケース」は問題の典型であり、それを解決できれば多くの人が救われることは多い。

10. 「家族」の再生のための周辺縁者をつくる

行政の目から「今日生きるため」に逃れようとする家族。

彼らには「役職」で接する以外の、ある意味濃厚な人間関係を築ける「家族」的存在が必要だったりする。

支援をしていてつくづく感じることだが、相談者と「遠い親戚」的な関係を築けたら、その支援は成功である。つまりは「本当に困った時に至る一歩手前で相談できる」という関係だ。

「家族」の再生は夫婦や親子といった成員だけで可能となるわけではないことを見て来た。ちょっとした距離を持った周辺縁者がいることがポイントでもある。

逆に言えばその周辺縁者がいないと、家族の再生はまず成功しない。

縁者は血縁には閉じていない。ある意味誰でもやろうと思えば関われるとも言える。

つまりはそれこそ「社会」。

結愛ちゃんと家族が求めていたものかもしれない。