相続で家族が大モメ…!「争族(あらそう・ぞく)」が急増するワケ

新・争族(あらそうぞく)の現場から
江幡 吉昭 プロフィール

いうまでもないが、相続に関して両親を同じくする姉妹 には法律的には平等の権利がある。姉が「あなたは好き勝手してきた間、私は母親のそばにいた。多くもらう権利がある」というのは通用しない。

ただ、既になくなったものはどうしようもないのも事実。引き出したお金を別の口座に隠して、それを突き止めれば争えるかもしれないが、それができない以上は使った者勝ちになるケースも少なくない。

仮に納得できず裁判を起こしても、お金を使い込んだ、別の口座に隠し持っているという主張を立証するのは、実際上困難を極めることも多いようだ。この事案でいえば、最終的には恵子さんが泣き寝入りという形で決着するしかないのが現実。もちろん、恵子さんは納得できず、以来二人はまったく音信不通で、「二度と姉とは口をきかないでしょう」と語っていた。

 

嫁が知らぬ間に養子に…

もう一つの典型的なケースが法定相続権のない身内の扱いを巡る問題だ。

かつてほどではないとは言え、長男が親と同居する例は少なくない。この状態で親が介護の必要な状態になれば、長男の嫁が介護をするケースがほとんどだろう。介護は想像以上に大変なのだが、どんなに献身的に尽くしても、嫁には法律的に相続の権利がない。長男とすれば、親の面倒を見た自分たち夫婦が、他の兄弟より多くもらうのが当然、と考える。この見解の相違がトラブルになるわけだ。

通常のパターンでは、献身的に義理の親の介護をしたにもかかわらず、それが認められないという意味で、長男の嫁は被害者の立場なのだが、先日珍しいケースに出会った。

亡くなったのは85才の父親で、都内に自宅の他にアパートを5軒所有する資産家。相続財産は5億円弱あり母親はすでに他界、法定相続人は子供3人だけだった。

四十九日も終わり、遺産の分割協議……という段階で予想もしない事実が発覚した。なんと他の相続人に内緒で長男の嫁が、義父の養子になっていたのである。

長男はそのことを知っていたが、次男、三男には報告していなかったから寝耳に水。相続人が増えれば、もらえるものと思っていた遺産が減ることになるだけに、次男たちからすれば「聞いてないよ」状態で、当然、争続になった。

元々、嫁と他の兄弟は仲が悪かったこともあり、「義姉が父親を騙して養子になったに違いない」と主張した。しかし、その可能性は高くない。介護が始まった直後に父親が連絡して公証人を自宅に呼んで、長男の嫁が養子であり法定相続人であることを前提とした内容で公正証書遺言を作っているからだ。形式上は疑う余地はない。

ただ、遺言を作った段階で父親に判断力が確実にあったのかどうかで、これがやや微妙なのだ。完全に認知症であったわけではないが、まだら状態だったため、遺言作成の瞬間判断力がなかった可能性は否定できないのだ。次男たちもそれを主張したが、それを裏付ける材料が揃わず、法定相続割合で遺産が分割された。

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こうして遺産分割はなんとか決着を見たが、それですべてが丸く収まるわけではない。むしろ兄弟の仲は、修復不可能な処まで壊れてしまった。以降、両者の連絡は一切途絶え、三回忌以降の法要はすべて長男と、他の兄弟が別々にやることになったという。馬鹿馬鹿しい話と聞こえるが、掛け違ったボタンは簡単には戻せない。これが争族の現実なのだ。

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