新潟県知事選、勝者も敗者もいない「虚無感の正体」

いつまで「踏み絵」を強いるのか…
河野 正一郎 プロフィール

新潟県民に押し付けられる「踏み絵」

接戦となった今回の選挙の争点はなんだったのか。

2氏の公約を熟読したという40代の新潟市職員は「突き詰めていくと、2人の公約の違いは原発再稼働の是非の強弱しかありませんよ」という。

確かに、両氏の公式サイトを見ても、「県民信頼度ナンバーワンの県政」(花角氏)、「子どもたちの未来のために5つの約束」(池田氏)などと、具体的な政策が打ち出されているわけではない。この市職員は「永田町のパイプという意味では元官僚の花角さんのほうが政策実行能力はあるような気がしましたが、そこまで花角さんを存じ上げているわけでもないので……」と漏らした。

結局のところ、政策上の違いは、原発再稼働の是非しかなかったというわけだ。

しかし、この構図に対して、50代の県職員は「私たち新潟県民はいつまで原発再稼働の『踏み絵』をさせられるのでしょうか」とため息をついた。

東日本大震災で福島第一原発がメルトダウンして以降、新潟県知事選は今回で3回目。2012年は東京電力と対立する現職の泉田裕彦氏(現在は衆議院議員)が圧勝し、前回の2016年は、衆院選で落選中だった米山氏が再稼働反対を鮮明にし、県内ナンバー2の都市である長岡市長で与党の支援を受けた森民夫氏を破る予想外の結果となった。

 

地域振興策を打ち出せない地元政治家

この県職員も前回は原発再稼働反対を鮮明にした米山氏に投票した。だが、今回は迷ったという。「原発再稼働に反対なのは変わりません。それは多くの人が同じ思いだと思います。ただ、その争点だけで知事を選んでいいのか……。地域振興策を議論しないと、新潟だけ取り残されていきそうで不安です」と話した。

2015年に北陸新幹線が開業し、東京からの観光客の流れは金沢にシフトしつつある。新潟県内では、東京と結ぶ上越新幹線の本数が減るのではないかという見方が大勢だ。県内の人口減は止まらない。

地元メディアの記者も「原発再稼働ばかりが争点として注目されるのは、東京の論理ではないか。そもそも柏崎刈羽原発がつくる電力も、新潟県民には関係がない。東京の人、政権によって、新潟が翻弄されることに嫌気がさし始めている」と言う。

しかし、今回の選挙で、与野党ともに新潟の地域振興策について具体的な政策を示すことはできなかった。「今回は選挙まで期間が短かった」(自民党県議)というが、普段から地域振興の具体的政策を考えるのが県議の仕事だから、言い訳に過ぎないだろう。いや、そんな言い訳を口にできてしまうほど、地域の政党の政策立案能力は低下している、ということなのかもしれない。