先行き不安のユーロ経済を見抜く「視点」

自力浮上は難しそうだ

6月の第2週に入り、世界の金融市場は落ち着きを取り戻した。特に、1日に発表された5月の雇用統計を受けて、米国の労働市場の改善が確認できたことは大きい。それは、4~6月期は米国の経済成長率が上向くとの見方を支える要因だ。米中が通商面での妥協点を模索しているとの見方も加わり、先行きへの期待から米国の株価は持ち直している。

一方、ユーロ圏経済の先行きは不透明だ。将来的な金融政策の“のりしろ”を確保するために、ECBは量的緩和の段階的な縮小など、政策の正常化を進めたい。イタリアの政治リスクが高まる中、米国に支えられた市場のリスク許容度の回復は、ECBにとって金融政策の正常化を進めるチャンスだろう。それがユーロ圏の経済にどう影響するか、慎重に考える必要がある。

 

再加速の兆候を見せる米国経済

1~3月期、米国のGDP成長率は、前期比年率換算ベースで2.2%と、従来のペースを下回った。その理由は、大雪などの天候要因によって、個人消費などが伸び悩んだためだ。近年の米国では、1~3月期は景気が弱含み、4~6月期以降は天候の改善とともに景気が上向くことが多かった。そのため、今年も米国経済が同様の展開をたどるとの予想が一般的だ。

6月に入り発表されたデータを見ると、景気は想定通りのパスを歩んでいるといえる。雇用統計では、非農業部門の雇用者数、時間当たりの平均賃金ともに予想を上回った。ISM製造業と非製造業の景況感指数は、3月と4月の落ち込みを経て、5月は上昇に転じた。これは、労働市場を中心に緩やかな景気回復が続くという見方と整合的だ。

加えて、市場参加者は米国の通商政策の動向を冷静に見極めようとしている。トランプ政権の強硬姿勢そのものはリスク要因だ。ただ、各国経済の相互依存度は高く、全面的な衝突は避けなければならない。どちらかといえば、米国と中国や欧州は、鉄鋼など、経済成長への貢献度が比較的小さい部分で鍔迫り合いを演じつつ、妥協点を模索するとの見方が多い。

トランプ政権が中国のIT国策企業である中興通訊(ZTE)に課した制裁を緩和するとの見方が出ていることも大きい。その背景には、中国が米国に譲歩したことがある。そのため、現時点で市場参加者の多くは政治動向への懸念よりも、米国経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)持ち直しへの期待を強めている。

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