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子供に会えない激忙の勤務医は「人生の最適化」をこうして実現した

仕事に振り回されていた人生から脱却

「人生を最適化しないとマズイ」――勤務医だった本間けいさんがそう考えたのは、夫婦ともに勤務医として激務に当たっていた30代頭のこと。子供に会う時間がないほど忙しい中で、保育園に落選

ここで、保育園だけのせいにするのではなく、自分たちで人生を変えなければならないのではないか、と思うに至った。働き方改革の一つの方向を示した『人生最適化思考』を書きあげるまでに、「最適化」について熟考を重ねた本間さんは、どのようにして「人生の最適化」を実現したのだろうか。

 

地方の総合病院で直面した現実

医師として働いていると、専ら病院内だけが主戦場になる事が多い。手術室に籠もったり、窓が無い部屋で一日中外来をしていると、季節の感覚がなくなる。春の息吹や、夏の青空、秋の紅葉まで、大学病院勤務時代は、ほぼ記憶が無い(東北だったので、通勤時の強烈な吹雪は今でもリアルに蘇る)。

大学病院勤務時代の記憶は、季節よりも病院の中ばかりだった Photo by iStock

地方は四季の移ろいが美しいが、その一方、医療面となると、都会と比較して、医師・大病院の数が不足しているエリアが非常に多く、深刻である。

医療現場では、「医師の偏在」「医師数の不足」が由々しき問題となっている。厚生労働省が発表している都道府県別にみた人口10万対医師数によると、僕が診療していた東北地方は医師数が不足している。東京をはじめとした大都市部に医師が偏在しているため、格差が大きくなるのだ。結果として、医師の過重労働に繋がる、という現実がある。

関連した問題として、高齢者が多い地方では、三次医療機関である大病院に患者さんが集中するという傾向が、都市部に比べて顕著である。

患者さんの心理的依存度にどう応えるか

地方において大病院に患者が集中する、現場レベルの理由として、代表的な点を挙げよう。

① 高齢者は体の様々な部分に問題を抱えているため、複数の科にまたがり治療を受けている方が多く、大病院に受診せざるを得ない

② 自身で運転できない、交通機関が少ないなどの交通事情の問題があり、一度の受診で、複数の科を受診できる病院に受診する傾向がある

③ そのエリアにクリニック自体が非常に少ない

④ 大病院に受診していれば安心という、高齢者ゆえの心理的な側面

この問題は、解決できそうで難しい、以前から地方が抱えている大きな問題の一つである。都会でしか医療経験が無い医師にとってはこの感覚が分からない方も多いかもしれないが、選択肢が少ない地方の高齢者にとっては、死活問題なのだ。

僕自身も、「どうにかこの病院で見続けて欲しい」と患者さんに泣いて懇願されたことが何度もある。地方は、大病院に対する患者さんの心理的依存度が確実に強いのだ。結果として、医師たちが抱える患者数も次第に膨れ上がっていくことになる。

実際、頼られるという点では非常に医師冥利に尽きるのだが、その結果、医師は消耗戦に陥ることになる。常に患者数、診察時間、疲労、休日の少なさとの戦いになるのだ。

医師の過重労働は日本だけの問題ではない。イギリスでも医師や看護師の過酷な労働環境によって患者のケアができなくなると何度もストライキが起きている Photo by Getty Images