医者が注射針の事故で「肝炎」「エイズ」に感染してしまうとき

覆面ドクターのないしょ話 第19話
佐々木 次郎 プロフィール

歯科医を悩ませる首の痛み、手足のしびれ

【放射線障害】

私たちは様々な場面で放射線を使う。レントゲン写真、CT、造影検査などである。骨折の整復をレントゲン透視下で行ったりもする。この際に放射線を被曝しているわけで、放射線障害には注意しなければならない。きちんと防護服(プロテクター)を着て、甲状腺保護のために首にもプロテクターをする。

私たちの親の世代以前では、放射線の機械が未発達で、検査の際の被曝量が大きかった。疲労感が強く、手に放射線潰瘍やがんができたり、指を失う医者も過去にはいたのである。

かつて私がお世話になった院長先生も右手の2本の指がなかった。現在は被曝対策が徹底されているので、通常の業務をしているかぎり放射線障害は起こらなくなった。

 

化学療法製剤の曝露】

がん治療の一つに、抗がん剤による化学療法がある。抗がん剤には毒性の強いものがある。がんに対して、ある意味「毒をもって毒を制する」という側面から、化学療法は発達してきたともいえる。

抗がん剤の中には、変異原性(DNAや染色体を損傷して遺伝情報の変化を引き起こす)や催奇形性を持つものが多い。DNAを損傷するということは、抗がん剤に接触した指などの組織をがん化させるおそれがあることを意味する。

抗がん剤を調剤する際や点滴の交換の際に、抗がん剤が飛び散って皮膚に付着したり、吸入してしまうこともある。このため、抗がん剤を調剤するときは、防護用具を装着することが必須なのだ。頭髪を覆い、目にゴーグル、口にマスクを着用し、体にガウン、手には手袋を装着する。病室で見る抗がん剤の点滴はこのような重装備で用意されたものなのである。

以上は医療従事者がかかる病気や障害のうち極めてシリアスな例である。そこまで重症でなくても、医療従事者を悩ませる病気は他にもある。

【歯科医の場合】

歯科の先生たちは、前傾姿勢で狭い口の中を覗き込むように診療する。これでは首にかかる負担が非常に大きい。長年この姿勢で仕事を続けると「頸椎〈けいつい〉症」になるおそれがある。

頚椎とは首の骨のことで、頚椎症とは首の骨の変形などが原因で、首の痛みや肩凝りを引き起こす病気である。頚椎からは手に向かって神経が伸びている。頚椎症が進行すれば、手のしびれを生じることもあり、歯科医を大いに悩ませる。

確かに歯医者さんは前傾姿勢をとらなくては治療ができない(photo by istock)

【外耳道炎】

この疾患は、わかりやすく言えば、耳の穴の炎症である。一般には、耳をほじってなるのだが、医者の場合は原因が異なる。

医者になりたての頃、いきなり多数の患者さんを診察する生活が始まる。聴診器をつけたり外したりするので、やがて耳の穴に炎症を起こすのだ。

健康診断のときは、1日に100人単位で診察する。担当医は一日中聴診器を使うので、午後には耳の穴が痛くなってしまう。最後には横着して聴診器を付けたまま問診や診察をする医者もいる。

医者にとって「耳にたこができる」とは、この痛みを乗り越えたときなのだ。