日本に「超一流」が育ちにくい理由~才能を伸ばす脳の育て方とは

日本人の脳にせまる④
中野 信子 プロフィール

「頭がいいね」の圧力

それでは「頭がいいね」とその素質を褒められたとき、子どもはどのように考えているのでしょうか。

子どもには「『頭がいい』と思われているのなら、その評価を変えないようにふるまわなくてはならない」という心理的な圧力がかかります。

Photo by iStock

これは子どもばかりではなく、大人にも働く力です。「いつもおしゃれですね」と言われると、そう言葉をかけてくれた人の前ではなんとなくだらしない格好ができなくなってしまったり、「いつもやさしいですね」と言われると、その人には親切にふるまわなければならないような感じになったり。この現象はラベリング効果と呼ばれることもあります。

 

つまり「頭がいい」と褒められると、「頭がいいと思われているのなら、期待されているとおりの結果が出るような課題を選ぼう」という考えを持つようになり、難しい課題に挑戦しにくくなってしまうのです。

さらに、「期待されているとおりの結果を見せられないことで相手を失望させたくない」と考えるので、期待されているとおりの結果を報告する=ウソをつく、という行動が起こりやすくもなるのです。

この研究は、80点は良い成績である、という前提で進められています。しかしいつも優秀な成績を取っている優秀な人たちは「80点が良い点数」とはなかなか感じにくい。このことは前の記事で指摘したとおりです。

自分では良い点数を取っている実感もなく、努力も工夫も認められることはなく、ただなんとなく褒められてしまう。人よりもやすやすとできてしまうのに、常に「才能があるね」と褒められ続ける。80点で満足できないような優秀な人たちほど、インポスター症候群に陥る可能性がより高いことの理由には、こうした背景があると考えられます。