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「超巨額軍需ビジネス」の誘惑に米IT企業が抗えない理由

国防総省の予算総額は7000億ドル!

米グーグルは先週、以前から物議を醸していた軍需事業「プロジェクト・メイブン(Project Maven)」から手を引くことを明らかにした。

自らの企業イメージや一部社員の反発などに配慮したためと見られるが、これは一時的な措置との見方もある。つまりグーグルは今後、新たな軍需ビジネスの開拓に乗り出す可能性があるのだ。

https://gizmodo.com/google-plans-not-to-renew-its-contract-for-project-mave-1826488620

背景には、先月施行されたEUの「GDPR(一般データ保護規則)」など、消費者のプライバシー(消費者データ)に関する締め付けがある。このためグーグルのようなIT企業には、従来のビッグデータ・ビジネスに匹敵する新たな収益の柱が求められているが、巨額の収入が見込める軍需ビジネスはその最有力候補となるのだ。

 

プロジェクト・メイブンとは何か

2017年7月に米国防総省で開始された「プロジェクト・メイブン」は、国防関係の様々なビッグデータ解析を(先端AI)ディープラーニングで自動化する取り組みだ。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54959

たとえば、スパイ衛星やドローン(無人機)が撮影する紛争地帯の画像情報、あるいは諜報部門からのインテリジェンスなど。これらの情報(ビッグデータ)は時々刻々と国防データベースに蓄積され、もはや人手では対処仕切れないボリュームに達している。これを人間とは桁違いの高速処理が可能なAIに解析させることで、安全保障上の様々な案件に素早く対応できるようになる。

国防総省は、このプロジェクト・メイブンをグーグルに発注することにした。同社はディープラーニングの開発力で群を抜くと共に、その効率的なプロジェクト管理にも定評がある。彼らに任せれば、(国防総省のような)官製プロジェクトの弊害を打破して、短期間で成果を上げることが可能と考えたからだ。

この仕事を受注したグーグルは、手始めに「TensorFlow」と呼ばれるフレームワーク(ディープラーニング・システムを構築するための開発基盤)を利用し、僅か数ヵ月でテロ監視用の画像解析ツールを構築。これは2017年中に世界各地の紛争地帯に導入され、その上空を飛ぶ「ScanEagle」や「MQ-9 Reaper」など、米軍ドローンが撮影した「IS(イスラム国)」関連映像の分析に活用された。

当初グーグルは、プロジェクト・メイブンの関係者以外には内密で同プロジェクトを進めていた。が、それがやがてグーグルの全社員に知られるようになると、彼らの間で反発が持ち上がった。(数万人に及ぶ全社員のうち)約4000名の社員が「軍事技術の開発には加担しないこと」を求める歎願書に署名した他、10名余りの社員が抗議のために辞職したと見られている。

これに対しグーグル経営陣は、「現時点でプロジェクト・メイブンは“僅か”900万ドル(10億円程度)の収入しかもたらさない上、(軍需事業とは言っても)直接、人間を殺すような技術開発ではない」と社員に訴え、彼らの理解を求めた。

が、グーグル社員の多くは、この説明に納得しなかった。

プロジェクト・メイブンの第一弾となる「ドローンが撮影した地上映像の解析」は、「敵となる人間を識別して、これを攻撃する用途」にも応用可能だ。いかに小規模とはいえ、こうした軍事開発は、「邪悪になるな(Don't be evil)」という創業時のモットー、つまり同社の基本理念に反する。また、これに端を発する形で、いずれはもっと大規模な軍需プロジェクトに発展する可能性もあるからだ。

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