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抗うつ剤の減薬には「SNS断ち」がよく効く

私的「減薬・断薬」放浪記【4】

ノンフィクション作家の上原善広さん、実は長年に渡り心療内科に通い、大量に服薬していました。しかし一向に症状は改善せず、服薬を続けることに疑問を抱き"減薬・断薬"を決意。本連載ではその一部始終をお届けします。

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精神科患者に喫煙者が多い理由

確かに、それまで減薬で寝込んでいた人が突然「四国遍路を歩いてくる」と言い出したら、田島医師でなくても双極性障害(躁鬱病)を疑うだろう。

今まで飲んでいた薬の効果がとれてくると、本来の自分の性格が現れるようになる。私の場合、双極性の傾向があるということは、前のクリニックの時から言われていたし、極端に振れる性格であることは承知している。

私は減薬することで、元からもっている躁鬱の傾向が出てきたのだが、ほとんどの人は減薬ができてくると「あれ、そういえば、もともと自分はこんな性格だったな」と実感できるようになる。

昔の文豪などでも、例えば太宰治の年表を読んでいると、バルビツール系睡眠薬の中毒に苦しんだという記述が出てくる。太宰は周囲の助けも借りながら再婚し、家庭環境を改善するなどして、中毒症状から脱するのだが、年表などには「睡眠薬の中毒症状に苦しむ」と簡潔に記されているだけだ。しかし実際には、ひどい頭痛に不安感、重い倦怠感に不眠など、その苦しみは相当なものだっただろう。

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うつや発達障害など、とにかく脳に作用する薬は、やがて耐性による分量の増加と依存性、禁断症状に苦しめられることになる。だからまだ精神科・心療内科に行ったことがない人は、とくに薬に手を出すのはかなり慎重になった方が良い。一旦飲み始めると耐性がついて効かなくなり、服用量が限界まで増えていくだけでキリがなくなるからだ。また長年使用すると脳に影響が出て、仕事はもちろん、社会生活に支障が出ることは確実だ。

また当人は良くても、服薬による脳の損傷によって、結局は痴呆や統合失調症のような症状が出て、周囲に余計な迷惑をかけることにもなる。だから一旦手を出してしまったら、できるだけ速やかに減薬を始めた方が良い。早ければ早いほど、禁断症状やその後の後遺症も最小限で済むからだ。

調べていてちょっと面白いなと思ったのは、長年、精神科の病院に入院している患者の中に、喫煙者がとても多いという話であった。

どうも喫煙すると、精神薬などの成分を早めに体外に排出し、薬効を緩やかにする効果があるそうで、自然に身体が欲求して喫煙しているのではないかと研究がすすめられている。

そういえば私も、それまで喫煙したことがなかったのだが、服薬を始めて2年ほどでパイプ喫煙を始めている。これはちょうど薬の量が多くなっていた時期にあたる。もし喫煙と薬の関係が明らかになれば、人間の身体は自然に、自分を守ろうとするものなのかもしれない。

 

昨年の9月、私は1ヵ月ほど取材の下見を兼ねて四国遍路を歩き、徳島から高知までを踏破した。そこで金が尽きたので一旦帰ることにしたのだが、長時間・長距離の歩行は、運動療法はもちろんちょっとしたショック療法になったと思う。人によってはそれがマラソン参加になったり、趣味の再開になったりするかもしれないが、少なくとも良い気分転換にはなったと思う。

減薬して良かったのは、本来の自分と改めて向き合う機会を得たことだろう。本来の性格が戻ってくるにつれ、自分の短所や長所を再確認できるようになった。

こうして多くの精神薬を切ることに成功した後、私は最後まで飲んでいたベンゾ系の薬を徐々に減らすことにした。