シングルマザーが考察する「ワンオペ」と「日本の夫婦」の深い闇

原因は「ツーオペ」の失敗にあった
松本 愛 プロフィール

夫がいる妻のほうが家事育児負担が多い!?

以上のようにリスク管理をすると、こなせる仕事量はかなり限られてくる。よって、進学資金や自分の老後を考えるととても素面ではいられない。また、万が一、私が事故にでもあって帰れないようなことになれば、もうどうしようもない。将来や不慮の事故への不安は見て見ぬ振りするしかない。

とはいえ、シングル家庭ワンオペならではの気楽さは捨てがたいものがある(もしかしたら楽観的な性格のせいかもしれないが)。他の大人の目がないので、辛いときはここぞとばかりに手を抜いても文句を言われることがないのだ。お弁当もお惣菜も買い放題だし、散らかし放題でOK。

さらに一人親家庭は保育園入園選考のポイントが高いことからもわかるように自治体からのサポートが手厚く、離婚から3年以内ならヘルパーサービスまで利用できる(東京都。費用は所得に応じてだが、かなり安い)。また、周りもみな優しく「困ったら言ってね、うちで面倒みるからね」って声をかけてもらうことも多く、心強い。

 

さて、夫がいる妻たちよ、もう一度、読み直してみてほしい。私が書いた1日の家事育児の流れを。

ねえ、同じように、下手したらそれ以上に、家事も育児もやってない??

総務省の「平成28年社会生活基本調査—生活時間に関する結果-」を見てみると、それがよくわかる。子供がいる共働き家庭の夫が1日のうちに家事と育児に費やす時間は31分。一方妻は、4時間22分だった(ちなみに、妻が無職の家庭は妻が家事育児に費やす時間が7時間を超えるが、夫の負担時間はほぼ変わらない)。

冗談じゃなく、夫婦揃った家庭の妻たちの方が、家事を外注に出せないうえ、夫がいるため大人一人分の家事が増える分、私より家事育児に費やす時間が長かった、ということだ。

大人一人多い分、食事の支度や洗濯の手間が増えるのは当たり前。それだけじゃなく、Yシャツのアイロンがけや、弁当作りなど、夫の世話といえるような家事まで行っているだろうことが容易に想像できる。

一方夫の31分は、家事と育児合わせての時間だ。15分でできる家事、15分でできる育児ってなんだろう。せいぜい、食器を洗って、子供と一緒にお風呂入るくらいのものではないだろうか。何度も言うが、うちの子(5歳)だって、食器は洗えるし、お風呂にも一人で入れる。

つまり、シングル家庭でも、単身赴任家庭でもないのに、なぜかワンオペしなければいけない母親が日本には溢れている、ということだ。

難しいのはワンオペじゃなくてツーオペのほう

2016年に放送されたムーニーのCMを覚えておいでだろうか。

赤ちゃんが生まれてから母親がずっと一人で孤軍奮闘する様子をリアルに描写したCMに「ワンオペするのが当然のようなCMは良くない」とか「父親はどこにいった」などの声が寄せられ、当時かなり話題になったニュースだ。中でも「当時の辛い気持ちがリアルによみがえって涙が出た」という母親からの声が多く聞かれた。

でもこの数字を見れば、それも当然。陣痛が始まって、痛みに眠れない夜を越し、力を振り絞って赤ちゃんを産んだと思ったらその時から始まるノンストップ育児。出産のせいで体力ゲージがマイナスなのに、そこから2、3時間の細切れ睡眠が半年は続く。6時間以上まとめて眠れるようになったのは子供が2歳を過ぎてからというお母さんだって珍しくない。

そんな過酷な育児はもちろん、さらに家事まで一人やらざるを得なくて、自分と同じような母親の姿をCMで目にしては涙が出ちゃう、というのが日本の母親たちの現実、ということなのだ。

シングル家庭のワンオペは他に選択肢のないワンオペだし、いうならコンビニオーナーのようなもので裁量もある。

だが、夫婦そろった家庭でワンオペする羽目に陥っているならば、それはワンオペではなく、ツーオペの失敗じゃないだろうか? 「すき家」のブラックバイトと同じ、押し付けられた無茶な労働であり、そのことに感じる不公平さと不自由さが、母親たちの余計な負担になっているに違いない。

一体、どうしてツーオペは難しいのだろうか。

「まずはゴミ出しから、と夫にゴミ出しを頼みました。でもゴミを集めたあとのゴミ箱にゴミ袋がセットされてなかったので、ゴミ出しの際にはゴミ袋のセットまでをお願いしたいと言ったら、イライラしながら『そんなのお前がやれよ!』と言われちゃったんです。『何のための育休だよ』って」

というA子さん(27歳・出版系)。「そう言われてしまったら、お願いした私が間違っていたかな、と思って」と力なく笑うが、子供はまだ3ヵ月。夜中はまだ3時間とまとめて寝られず、疲労困憊の様子だ。

B子さん(33歳・金融系)は子供が1歳になり、保育園に子供を預けて仕事に復帰した。

「保育園から帰ってきてご飯を作って、子供に食べさせてお風呂入れてとしてると、正直片付けまで手が回らなくて、床に服とかおもちゃとか落ちてることもあるんです。そうすると、夜帰ってきた夫に『ここ片付けてね』ってニッコリ言われるのがすごくストレスで……」と言うので、旦那さんが片付ければよくない?と聞いたら「彼は、自分の脱いだ靴下すら洗濯カゴに入れない人なんです」とのこと。