弁護士が学校を支配する…? 「スクールロイヤー」の危うさ

彼らがいじめ問題に関わることへの不安
大前 治 プロフィール

「いじめは犯罪だからダメ」と教えるべきか

文部科学省が掲げるスクールロイヤーの役割には、「いじめが刑事処罰の対象となることを教育する」ことも含まれている。

「いじめは犯罪だからダメです」と教えるのは、電車内で走り回る子どもに「怒られるからやめなさい」と言うのと同じである。なぜダメなのかという実質的な理由を教えていない。

大切なのは、処罰されるぞと威嚇することではない。いじめが人の心身をどう傷つけるのか、なぜ一人ひとりが大切にされるべきかを教えるべきである。

それに、いじめ行為には暴行罪や脅迫罪などの犯罪に該当しない行為もある。

「みんなで無視をする」とか「机の上に花瓶を置く」などの嫌がらせは、刑事処罰の対象には該当しない。

「法に触れる犯罪だからダメ」と教えることは、法に触れなければ許容されるかのようであり適切ではない。

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教育の力が試されている

文部科学省は、犯罪に該当するいじめ行為を早期に警察に通報する方針を掲げている。

2013年5月の通達は、「冷やかし、からかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言う」という行為は警察へ通報するべき脅迫罪や名誉棄損罪に該当すると例示している。

すると、冷やかし行為があった場合、スクールロイヤーは「警察へ通報するべき」と判断するべきことになる。しかし、これは教育的な解決とは程遠い。教師が生徒に向き合って積み重ねてきたことが、警察への通報によって崩れてしまう。

教師や学校への正当な不満が背景にあって、問題行動が生じていることもある。問題行動の原因を除去する努力が積み重ねられていたかも知れない。そうした事情を切り捨て、ただ生徒一人を悪者にして警察へ通報することは教育の場に相応しくない。

警察に通報されると、生徒は被疑者として扱われ、犯罪捜査として取り調べがおこなわれる。刑事政策的に処遇を決定する裁判手続が進むと、学校側が生徒に対して教育的に接する機会は失われてしまう。

そんな扱いを受けた生徒にとって、学校は再び戻って来れる場所、戻りたい場所になるだろうか。

 

このように、スクールロイヤーによって教育的配慮のない法律判断が下される危険性は否定できない。

本稿に対しては、実際にスクールロイヤーとして真摯に奮闘している弁護士の苦労を理解していないという批判があるかも知れない。

しかし、少数かつ先進的な弁護士が関与している現状と、大勢の弁護士が関与して全国的に推進される将来状況とでは、危惧される問題とその規模は異なる。

多数の非専門家が教育に関わることによって児童生徒に否定的影響が与えられる事態は避けるべきである。

スクールロイヤー制度に対しては、教育界からも法曹界からも賛否が積極的に議論されるべきである。今後の議論に期待したい。