弁護士が学校を支配する…? 「スクールロイヤー」の危うさ

彼らがいじめ問題に関わることへの不安
大前 治 プロフィール

弁護士が関わることで隠される事実

いじめ事案について、弁護士が関われば適切な対応ができるとは限らない。学校と生徒、どちらにとっての「適切な対応」を目指すかによって方向性や妥当性は変わってくる。

文部科学省が2017年3月に定めた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」には、次のように書かれている。

「学校の設置者及び学校の基本的姿勢」より
自らの対応にたとえ不都合なことがあったとしても、全てを明らかにして自らの対応を真摯に見つめ直し、被害児童生徒・保護者に対して調査の結果について適切に説明を行うこと

このガイドラインが遵守されることを願いたい。

 

いじめを早期発見できなかった教師や、いじめられた生徒をさらに傷つける言動をとった教師の問題点なども、隠さずに説明されるべきである。

しかし、そこにスクールロイヤーが関わることによって生じる困難がある。それは、学校側から依頼を受けた弁護士という立場に由来する。

もし学校側と生徒・保護者側に信頼関係があるならば、弁護士が中立的な観点から事実経過の説明や解決案の提示をしやすい。しかし、厳しい対立状況にある場合は、弁護士が完全に中立公平な第三者でいることはできない。

なぜなら、保護者が学校を相手どって裁判を起こした場合、その弁護士は被告側の代理人として法廷に立ち、学校を守る立場に立たされる可能性がある。それを、裁判を起こされる前から予期しておかなければならない。

これは弁護士の職業的習性である。後で不利にならないよう言葉に注意しなさいと関係者に指示することも、守秘義務を遵守することも、スクールロイヤーの仕事になる。

民事裁判では、被害者側が「学校・教師による違法行為」を証明しない限り、学校側が法的責任を負うことはない。学校側が事実を証明する責任はない。

それどころか、勝つか負けるかの法廷闘争の場では、被害者側の証言を「事実と異なる。信用できない」と否定することも、弁護士の職務として正当化されうる。

実際に、これまでに弁護士が学校側の代理人をつとめた裁判で、「弁護士のおかげで事実が明らかにされた」といえる事例がどれだけあるだろうか。

むしろ、弁護士が事実を隠す側に立っている(ように見える)事案も散見されるのではないか。これは、依頼者を守る職責を負う弁護士にとって当然であっても、被害者側からみれば納得できない。

このように、生徒・保護者が学校と対立する場面において、スクールロイヤーが学校側を強く支えてしまい、事実の解明に否定的影響を与えることも危惧される。

もし学校での事件や事故について調査委員会が立ち上げられる場合には、スクールロイヤーの言動も調査対象となり検証されるべきである。

学校側の一員であるスクールロイヤーは、中立性が求められる調査委員会の構成員となるべきではない。