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東大絵画廃棄と金魚電話ボックス撤去から考える「アートと法律の関係」

法律外の倫理が求められるのはなぜ?
木村 剛大 プロフィール

アート専門の審理機関が必要?

紹介した日本の2つの事例は、ともにアート作品の取り扱いの難しさを示しているように思う。法律上の検討はしなければいけないが、それだけでは不十分なのである。

このようなアートを巡る問題に対する判断の難しさは、実は国際的にも認識されている。

〔PHOTO〕iStock

たとえば、世界知的所有権機関(WIPO)の仲裁調停センターが提供する紛争解決サービスでも、「アート及び文化遺産に関する紛争」をひとつの特徴的分野として取り上げている。

オランダのハーグでは、2018年6月7日付けでアート仲裁裁判所(the Court of Arbitration for Art)が設置され、真贋判定、詐欺事件、著作権問題、所有権問題、契約紛争などを取り扱う。

 

審理体はアートの問題に精通した法律家により構成され、鑑定や来歴(作品の所有歴、展示歴のことをいう)などのアートの中立的な専門家を紛争の当事者ではなく、審理体が任命する。

公開が原則の裁判所と異なり、アートの世界ではよく求められる当事者の匿名性も確保して、アートマーケットに受け入れられる正確な判断を下すことを目指すという。

制度が浸透するまでには時間と労力が必要かもしれないが、紛争解決のシステムとしては合理的な試みだと思う。

日本においても、アーティスト、作品の所有者などの関係者すべてに納得のいくシステムが望まれるところである。