なぜ「アソコ」が2本ある?サメの驚きの生殖方法に迫る

なかには母体内で共食いするものも…
沼口 麻子 プロフィール

精子がメスの体内に入ると、「卵殻腺」というところに精子が貯められる。そこに、卵巣から排卵されてきた卵が「輸卵管」を通って運ばれ受精する。

卵殻腺の中で、受精卵となった卵のまわりに卵殻や薄い膜が形成され、「子宮」に送られる。

なお、厳密にいえば、サメには「子宮」は存在せず、輸卵管の一部で卵を育てるが、以下ではわかりやすく、その輸卵管の一部のことを「子宮」の名称で統一する。

卵生のサメの多くは、卵殻に包まれた受精卵を産むが、なかには、母体内で卵の発生が進み、偶発的に子ザメを産む種もある。

出生サイズまで育った子ザメや、卵殻に包まれた卵は、肛門と膣がひとつになった「総排出腔」から産み落とされる。

胎生のサメの、母体内での育ち方も実に多様だ。

まず、子ザメが栄養を卵から得るか、母体から得るかで大きく2つのパターンに分かれる。卵から孵った子ザメが、母体内で自分の卵黄だけで成長する「卵黄依存型」と、母ザメから栄養補給を受ける「母体依存型」の2つ。

後者の「母体依存型」は、さらに3つの繁殖形態に分類できる。

ひとつは、母ザメが孵化した子ザメのために、エサとしての卵(未受精卵)を提供する「卵食型」だ。このバリエーションとして、孵化した子ザメどうしが兄弟姉妹で共食いするパターンもある。

2つ目は、子宮壁から分泌される栄養物「子宮ミルク」を子ザメに供給する「子宮ミルク型」。

 

3つ目は、「胎盤」を形成し、「へその緒」を介して栄養を与える「胎盤型」。

胎盤もへその緒も、哺乳類のものとは起源がまったく異なるが、とても似ている働きをしているところが驚きだ。さきほどの妊娠していたハンマーヘッドが、この胎盤型のサメで、メジロザメの仲間などは、この繁殖形態で子ザメを育てる。

胎生のいずれのパターンでも、子ザメがある程度の大きさまで育つと、「総排出腔」から産み落とされる。

少数精鋭の生存戦略

「卵生」にせよ「胎生」にせよ、メスが産み落とす数は数個あるいは数尾から数十程度。まれに、100~300尾以上を産む種類もいるが、一度に数千万個の卵を産む硬骨魚類と比べるとはるかに少ない数だ。

つまりサメは少数精鋭の生存戦略をとっているのだ。「硬骨魚類」が数え切れないほどの卵を産み、「数撃ちゃ当たる」の作戦で生き残りを図るのとは対照的だ。なかにはシロワニのように、母体内で兄弟姉妹が生存競争を繰り広げ、生き残った「最強」の子ザメだけを大海原に送り出すサメもいる。

サメの卵は一度に産む数が少ないのに加え、サイズも大きく形も独特だ。

たとえばネコザメは、ドリルのような形をした15㎝大の卵殻に包まれた卵を産む。ナヌカザメの卵殻は平べったく横長で、四隅に巻きヒゲがあり、浜辺に打ちあがっていることもあることから「人魚の財布」とも呼ばれている。

サメは交尾をするだけでなく、子ザメの生まれ方もバリエーションが豊富だ。まだ繁殖方法が解明されていないサメもたくさんいる。

6月10日午後2時より「水族館を200倍楽しむ方法」トークショー
沼口麻子さんの『ほぼ命がけサメ図鑑』発売を記念して、文筆家の川端裕人さんと三省堂書店池袋本店でトークショーを開催します。
チケットは大人/1000円、小学生以下500円
▼こちらからお申込みください
 http://eventregist.com/e/I175EnvR2LO3