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首脳会談で和平成立でも北朝鮮の「抑止力」は温存されるという現実

朝鮮半島の軍事的状況に変更はナシ
当初米朝両国で激しい非難応酬の原因となった核・ミサイルの即時放棄の要求は弱まり、協議自体、継続となる可能性が高まってきた。そもそも、体制を守るためにここまで進んでしまった北朝鮮の重武装。北朝鮮は核放棄に同意しても、体制放棄に同意することはありえない。核・ミサイルを放棄するなら、別な形の「相互抑止」が必要になる。極端な融和ムードの裏でも変わらない、この基本条件から、米朝首脳会談後の新たな「相互抑止」の形を、半島軍事問題研究の第一人者が読み解いていく。

雰囲気以外、何も変わっていない

この約半年間の外交的な展開は異例なほど速かった。

昨年(2017年)9月に6回目の核実験、同年11月に大陸間弾道ミサイル「火星15」号試射の「成功」宣言を果たした金正恩体制下の北朝鮮は、今年の元日、対米強硬姿勢は維持しつつ、韓国との緊張関係を解消し、平昌冬季オリンピックに参加する用意がある旨表明した。

 

そして、米国のトランプ大統領が初の米朝首脳会談に前向きな姿勢を示すと、南北首脳会談に向けての南北間協議、金正恩委員長の初の訪中(3月26日)、第3回南北首脳会談(4月27日)、金正恩委員長の2回目訪中(5月8日)、北朝鮮に拘束されていた3人のコリア系米国市民の解放(同9日)、北朝鮮の核実験場廃棄表明(同13日)、米韓合同軍事演習「マックス・サンダー」実施と北朝鮮による批判(同16日)、北朝鮮による南北高官級会談の中止(同16日)、北朝鮮高官による米高官批判及び米朝首脳会談中止を示唆する強硬発言(同22~24日)、北朝鮮の核実験場廃棄ショー等(同24日)など、目まぐるしく展開した。

さらに5月24日、米国のトランプ大統領が米朝首脳会談を中止する旨の書簡を金正恩委員長に送付。翌25日、北朝鮮の金桂冠第1外務次官が対米対話への前向きな姿勢を再表明すると、その直後にトランプ大統領は「北朝鮮と生産的な協議をしている」とツイッターに書き込んだ。

1日で朝鮮半島をめぐり楽観と悲観、危機感と安堵感が目まぐるしく入れ替わったのである。

27日には韓国の文在寅大統領が秘密裏に訪朝し金正恩委員長と2回目の会談に臨み、トランプ大統領も初の米朝首脳会談が予定通り6月12日に開催される旨表明した。

では、一体が変わり、何が変わっていないのか。

南北融和ムードは高揚し、少なくとも政治・外交情勢は改善しているかのような印象は強まってきた。北朝鮮の対中・対露関係も強化された。

しかし、この事態の焦点である、北朝鮮の戦略目標も軍事的実態そのものは、今年2月から現在まで、何も変わっていない。

明確に変わったのは、印象や雰囲気のみである。今後もこうした雰囲気がいつ変化しても不思議ではない。