娘にダイエットをやめさせようと頑張る「肥満の母」の醜い真意

わが子の健康を奪う親たち(2)
守田 向志 プロフィール

自分の劣等感を和らげよう

美由紀は中学1年の時の身体測定で140cmに50kgと計測された。その肥満体形を変えたいと思い立ってダイエットを始めたが、同じように太っている母親がそのことに気づいて、妨害を始めた。

ダイエット中だと美由紀が言うのに、毎日お菓子を作り、美由紀がそれを食べないと激怒して、それを床にぶちまけたり、泣きじゃくったりするのだ。

そんな母親の相手をするのが嫌で、美由紀は家では仕方なくお菓子を食べ、代わりに学校では昼食を抜いて過ごすようになったが、その生活では思うようにやせられず、結局、思春期を通じて太ったまま過ごすことになった。

しかも、長年にわたって母親からの圧迫や自己否定感に苦しみ続けたせいで、心の健康も損なわれてしまい、大人になってからは摂食障害に悩まされるようになった。

この事例が「道連れ型」の「奪う親」の典型例です。

太った親が子供を幼いうちから意識的に太らせ、子供が思春期に入りダイエットを始めると妨害して引き留めるのです。抜けがけは許さないぞ、というふうに。

ある研究によると、下記のように、親が肥満だと子供も肥満になる確率が圧倒的に高いことが判明しています。

両親とも肥満→子供の肥満発生率:80%
母親のみ肥満→  (同上)  :70%
父親のみ肥満→  (同上)  :30%
両親とも普通→  (同上)  :10%
「子供の肥満対策ガイド」(http://www.takaa.jp/)より
 

これは遺伝によるものではなく、肥満の親が子供にも自分と同じ太りやすい生活を送らせることが主な原因だと言われています。

しかし、今は「子供を肥満体形に育てると、子供の将来に良くない」と広く言われている時代です。実際、私の生徒の親御さんにも、ご自身はふくよかな感じであるのに、「子供には同じ苦労をさせたくない」と言い、子供の食生活や運動習慣に気を配られている方も多くいらっしゃいます。

そんな時代の中、あえて自分と同じように子供も太らせる親の心には、自分の仲間を作って自分の劣等感を和らげようという身勝手な「道連れ」の意図が、多かれ少なかれあると考えられます。

そして、親がその意図を認めなくても子供は敏感にそれを感じ取り、心に傷を負うことになるのです。

1ヵ月間、カップラーメンだけの食卓

私が指導したある女子生徒の話によると、修学旅行の夜、同じクラスで肥満気味の女子4人全員に、太った親にダイエットを妨害された過去があることがわかったそうです。

食事を残すと怒鳴られたり叩かれたりするのは序の口で、残した食べ物を投げつけられたり、1ヵ月間、カップラーメンだけを食卓に出されたりして、その恐怖によりダイエットを諦めることになったのでした。

自分がもうやせるのを諦めたから、私のことも太ったままにしておきたいんだよ

と、彼女たちは口を揃えて嘆いていたそうです。

もちろん、他のコンプレックスにおいて、子供を「道連れ」にする「奪う親」もいます。

たとえば、自分が歯並びの悪さに苦しんだから、子供にも歯の矯正をさせない、自分のニキビ跡が酷いから、年頃の子供に「ニキビなんて気にするな」と言う、などの行動をとった親の話を私は実際に聞きました。

「子供には同じ苦労をさせたくない」と言い、気を配ってくれる親との差は歴然なのです。