<ルポ>子供を「肥満体」に育てたがる親たち

わが子の健康を奪う親たち(1)
守田 向志 プロフィール

(2)コンプレックスを持たせようという親の意図を、子供が感じ取り傷ついている。

(1)の条件が満たされている場合、それが親の邪悪な意図によるものなのか、それとも親の誤解のせいなのかで、子供の心の傷つき方は大きく変わってきます。そして当然、前者の親の方が子供の心をより深く傷つけることになります。この親が「奪う親」と言えるわけです。

ただ、見た目のコンプレックスは目に見えるものの、意図は目に見えません。なので(1)の条件を満たしてしまった親は多くの場合、「その育て方が正しいと誤解していた」と説明することになります。実際、誤解が原因のこともよくあります。

この場合はセクハラやパワハラと同じく、被害者の主観が重視されます。加害者が「そんなつもりはなかった」と説明しても、被害者がその意図を感じ取った場合は「故意」だと判断されるわけです。

そして、同じ家で暮らす子供がその意図を感じ取ったと言うのなら、おそらく本当にそうなのだと私は思います。

なぜなら子供は、自分の親が「奪う親」であることを、できる限り認めたくないものだからです。

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誰もが「奪う親」になり得る

今回紹介した事例から、「奪う親」がかなり身勝手な動機で子供に見た目のコンプレックスを持たせることが、おわかりいただけたかと思います。

 

私が同世代の友人にこの「奪う親」の話をすると、「そんな親、本当にいるの?」という反応がよく返ってきます。可愛いわが子に意図的にコンプレックスを持たせるなんて信じられない、と言うのです。もし居るとしても極めてレアで異常な存在ではないか、と。

しかし、残念ながら決してそうではありません。

私自身、10年前に一人の生徒から相談を受けるまで、こんな親が実際に存在するとは考えもしませんでした。しかしその後、「奪う親」に苦しめられている生徒に何度も出会ったり、生徒から「奪う親」に苦しめられている友達の話を聞いたりして、このタイプの親が、今の世の中には想像以上に存在することを確信するようになりました。

中には、まったく無自覚に「奪う親」化している親もいました。

ふとした出来事を機に、誰でも「奪う親」になり得るのです。

もしかすると皆さん自身、いつの日か、わが子から「奪う親」という烙印を押されてしまうかもしれません。

そのような事態を確実に避けるためには、この問題について深く知っておくことが重要です。

連載の2回目(6月19日公開予定)では、子供に意図的にコンプレックスを持たせる「奪う親」の心理に、より詳しく迫っていきます。

註:本記事で紹介する事例は、プライバシー保護の観点などから仮名を用い、情報の一部を改変しています。

守田 向志(もりた・こうし)/1981年、福岡県生まれ。2004年、東京大学経済学部卒業後、会社勤務を経て09年に作家デビュー。主な作品に『ミネラル』『もし国会議員100人の日本だったら』『欲望チャッター』などがある。作家業の傍らで塾講師もしており、東大や早慶、中学御三家といった難関校への合格実績を多数持つ。