世界に強烈な衝撃を与えた「This Is America」とは何だったのか

2億回再生、社会問題を痛烈に描いた
柴 那典 プロフィール

強烈なユーモアと毒に満ちた「FUCK YOU音頭」

また、「This Is America」とほぼ同時期の5月8日に発表されたサニーデイ・サービスの新曲「FUCK YOU音頭」も興味深い。

今年3月にSpotifyとApple Musicの配信限定で新作アルバム『the CITY』をリリースした彼ら。

5月にはその全収録曲をSpotifyのプレイリスト上で解体、再構築するプロジェクトとして「the SEA」が始動し、その第1弾として曽我部恵一が手掛けたのが、この曲だ。

アルバム『the CITY』収録のバラード「ラブソング2」を曲名どおり音頭のスタイルに生まれ変わらせたこの曲。

ミュージックビデオでは、生気を失った眼のゾンビたちが盆踊り大会を力なく歩き回る。曲後半ではセクシー女優・古川いおりが笑顔で中指を立てる。

そして、こんな歌詞が歌われる。

 
ア~ ひらひら舞うのは八重桜
ア~ おサルの籠屋は池のなか
ア~ 森の友だちよんでくりゃ ア、ソウレ!
みんなみんな寄っといで
みんなみんな寄っといで
みんなみんな寄っといで
FUCK YOU FUCK YOU FUCK YOU FUCK YOU

ア~ ひらひら舞うのは銭の花
ア~ 音頭でシンゾーもバクバクだあ
ア~ 飼われて死ぬのが江戸の華 ア、どした!
みんなみんな寄っといで
みんなみんな寄っといで
みんなみんな寄っといで
FUCK YOU FUCK YOU FUCK YOU FUCK YOU

強烈なユーモアと毒に満ちたこの曲を、曽我部恵一本人は「すべて生命をかけた遊びです」とツイートしている。

怪作と言っていいだろう。

「This is Japan」が公開されたが…

一方、6月4日には「流行りに乗ってみた」と「This Is America」をパロディにしたダンス動画「This is Japan」も公開され、一時ツイッターのトレンドランキング1位となるほど注目を集めた(現在、該当ツイートや動画は削除されている)。

ただ、「おもてなし」「インスタ映え」「マジで卍」と歌い踊り、表層的な内容に終始したその内容には、原曲を知るリスナーから批判が集まっている。

たしかに、チャイルディッシュ・ガンビーノとヒロ・ムライがテーマにしているのは「エンタテインメントと社会の分断」だ。

もし本気のパロディとして「This is Japan」という動画を作るならば、インスタ映えする華やかな写真を撮り笑顔で踊る若者たちの後景には、過労死や全体主義や情報の隠蔽を示唆するイメージがあってしかるべきだろう。

ともあれ、「This Is America」が巻き起こした世界的なセンセーションは、音楽と政治や社会が不可分に結びついている今のアメリカを象徴する出来事と言える。

チャイルディッシュ・ガンビーノは9月に北米ツアーを予定している。現在制作中だという4作目のアルバムもそれまでには発表されるはずだ。期待して待ちたい。