少子高齢化でも「老後不安ゼロ」シンガポールで見た日本の未来理想図

人口減少に影響されない小国の知恵
花輪 陽子 プロフィール

日本は自助努力で老後資金を増やす時代に  

シンガポールでは67歳まで継続雇用を雇用主は申し出る義務があるため、働く高齢者は多いのです。

ガイドラインがあり、高齢になっても日本のように大幅に賃金カットがおこなわれることもありません。シンガポールでの高齢者世帯の1ヵ月の平均的な支出は30万円程度。

ファッションなどにかける支出は若い世代より少なくなるのですが、健康関連の支出は増えて月2万円程度使っています。

つまり、年間の支出は360万円、65歳から90歳までの25年間に換算すると、9000万円必要になります。

これは平均的なシンガポーリアンのケースで、持ち家が前提のシミュレーションになります。

持ち家のない場合や生活費が大きい場合は、より多額の金額を準備する必要があります。

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対して、日本で老後生活を送るにはいくら必要でしょうか。

2015年の総務省の家計調査によると、年金世帯の平均的な毎月の支出は27万5706円です。

年に換算すると、330万円程度、25年間で8271万円程度の金額が必要になります。

これに対して平均的な月の収入は21万3379円で年間約256万円、25年間で約6401万円が必要になります。

必要総額に対して年金などの収入だけでは赤字になるので、2000万円弱の貯金が必要になります。

生活費の他にも住宅の修繕や介護費用など予備費も1000万円程度は確保したいので、夫婦で3000万円程度の老後資金が必要になってきます。

老後生活を送るには日本で暮らすほうが物価も安く、現段階では楽でしょう。

しかし、日本には、収入や貯蓄が不十分で頼れる人もいない独居老人の孤独死が問題になっています。

更に将来はどのような社会や経済状況になっているか分かりません。

2060年には高齢者1人を1.3人の現役が支える不安定な人口構成になり、長生きリスクもあるので、「人生100年時代」を見据えたより長期的なライフプランが必要になります。

世代によっては逃げ切れるかもしれませんが、更なる給付のカットや保険料の引き上げが行われる世代は自分で準備しなければならないお金が膨らみます。

確定拠出年金制度など日本でも老後資金を自力で作る制度が整いつつあります。
今後は自助努力でもお金を作る時代になっていくでしょう。

自分のお金を自分で積み立てる自己責任の反面、税制の優遇を受けることができれば運用次第で老後資金を大きく殖やせる可能性もあります。

 

日本がシンガポールに学ぶこと

日本は技術など「持てる国」なのに、アピールが苦手なので勿体なく感じます。
これに対してシンガポールは持てるものは少ないけれど、戦略やプレゼンテーションなどで持てるものを最大限に活用していて、両者は対照的に思われます。

また、シンガポールは経済成長のためなら何でもするというぶれない軸がある国です。
日本も国に余裕がなくなる中、シンガポールのように前のめりになって積極的に成長戦略の矢を放っていかないといけないのではないでしょうか。
  
国にも個人にもお金があり、日本人に対する信頼が大きい今こそ、行動に移すべきではないでしょうか。高齢化による働き手不足をどうするのか、次世代のリーダーを育成するための教育はどうするのか。

日本より少子高齢化が深刻なのに女性、シニア、外国人労働者の活用で働き手不足を解消しているシンガポールから学ぶことはたくさんあるはずです。
  
この他にも、日本からの親子留学急増中の「世界基準の人をつくる教育」や、シンガポール富裕層のマネー哲学など、日本人がマネをしたら経済的に得をし、幸せになる方法を私が知り得る限り、拙著『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』でお伝えしています。

日本は、目標を見失った状態に陥っているのではないでしょうか。日本の未来を、子どもたちの未来を明るいものにするためには、どのような国にいしたいのか、どのようような人生を送りたいのか、ビジョンを描き続けることが必要です。

花輪陽子(はなわ・ようこ)1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFP認定者。1978年、三重県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業後、外資系投資銀行に入社。退職後、FPとして独立。2015年から生活の拠点をシンガポールに移し、東京とシンガポールでセミナー講師など幅広い活動を行う。日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」2011年度相談員