開成中学の国語「新傾向」は
どこまでエスカレートするのか

「カリスマ先生」田代敬貴が教える国語攻略法 第2弾
田代敬貴

 そのもようをまとめておこう。【プロローグ→深夜の「惨劇」のさわり→ひ弱な都会の蚊→恐れを知らぬ野生の蚊→都会の蚊の淫靡(いんび)な血の吸い方→タガメの獲物の襲い方→蛇に呑まれる死に方→野生の蚊の性能と攻撃の仕方→蚊の大群との戦闘ドキュメント】という具合である。

「話題のかたまり」で読む

 次に設問に移ろう。問1は、「筆者がこれからどのようなことを、どのような心構えで書こうとしているのか」という「予告の内容」を説明せよという問題だが、プロローグの部分を要約させようとする設問の意図をくみ取れない生徒が多い。

 問2は、「野生の蚊」の特徴をまとめよという、最も点の取りやすい問題だが、該当箇所が二つあることに気付かなければ三分の一しか得点できない。問3は約320字を費やした手の込んだ設問だが、要するに、< 都会の蚊→タガメ→蛇 >という三つの話題を読み取って、それぞれの内容をまとめさせようとするもの。

 話題のとらえ方に失敗すると、ここで30点(推定)失うことになる。問4も生徒が理解に苦しむものだが、神島の蚊を「平安元年のハマダラアカイエ蚊」と呼ぶ筆者の思いを説明させる問題である。

 「平安時代」の鏡の話は、文章の後半に一度でてくるだけなので、神社への参拝を怠って神の怒りをかったことに結びつけられる生徒は極めてまれである。また、この設問を解く頃には残り時間がほとんどなくなっているはずである。

 このように、04度の問題が難問であることに間違いはない。だが、すべての設問が文章内容の読み取りを確認しようとするものなのである。合格者平均が5割を下回るほど低くなったのは、受験生に十分な時間が与えられなかったからであろう。私は、50分という試験時間を考えれば、問1は削除されるべきだったと思う。

 では、約12点という合格者平均と受験者平均の大きな差はなぜ生じたのか。最大の要因は問3の成否にあったと私は考えている。私のクラスにおける演習結果を見ると、<都会の蚊→タガメ→蛇 >という話題の変化を正確に把握できた生徒の得点とそれに失敗した生徒の得点が、それぞれ合格者平均と受験者平均の数値に近似する。

 さらには、問2で「野生の蚊」に関する2度目の記述に気付かなかった生徒の得点は、ほぼ20点前後になってしまうのである。漢字の書き取り問題が10点分あるのだから、この記述問題が生徒にとっていかに厳しいものであったかということがおわかりいただけるだろう。

 ここで結論に入ることにしよう。私がこの難問を良問と考えるのは、合格者平均を取るための勝負が問2と問3にかかっているからである。

 私は拙著『田代式中学受験 国語の「神技」』(講談社刊)のなかで、< 説明文を「話題のかたまり」で読む >ことが「記述問題において、勝敗を分ける決定的要因になり得る」と書いたが、この問題こそがまさしく、「話題のかたまり」で読むことを正面から問うた問題なのである。

問題から漂う「女性的な感性」

 さて、こうした良問を作成した開成が、06年度から微妙な変化を見せ始める。記号選択問題、抜き出し問題、語句の意味を問う問題の復活と、「体験・感想型」記述問題(前出の拙著参照)の登場である。これと同時に、記述問題において作問意図の不明瞭な設問が散見されるようになった。