「生活保護法改正」は一体誰のため? 5つの問題点を徹底解説

このままでは当事者が…
大西 連 プロフィール

後発医薬品の原則義務化

2つ目の論点は、後発医薬品(ジェネリック)についてである。

現行法(2013年に改正)では後発医薬品については「可能な限り使用を促す」としているのだが、「改正案」では、「原則として後発医薬品による給付をおこなう」と事実上の原則義務化が明記された。

これについては、先述した「改革の工程表」にも記載があったように財政的な観点からの要因が強いだろう。後発医薬品の使用割合をKPIに設定するほどなので、肝いりの改正と言ってもいい。

とはいえ、これはとても大きな問題だ。ここでの問題は「生活保護利用者『のみ』原則義務化する」ということだ。

生活保護制度を利用しているからと言って後発医薬品の使用しか認められないのは、生活保護利用者は選択の自由を奪われていることである。

〔PHOTO〕iStock

国際協力NGOの世界の医療団も声明を出しているが、これは、生活保護利用者への明確な差別と言ってよい。

返還金の強制徴収&天引きが可能になる?

3つ目は、生活保護法63条の返還債務の非免責債権化と天引きを可能にする改正について、である。

少し法律っぽい話になって恐縮だが、日弁連が下記の意見書を出している。

これまで63条による費用返還は税金の滞納などと違い強制徴収されることはなかったのだが、「改正案」においては、それを「国税徴収の例により徴収することができる」としている。

※63条返還とは、たとえば、生活保護が開始された時点では現金化できなかった資産等が売却できた際に、支給された保護費のなかで必要な金額を返還する、などのこと
 

生活保護利用者への返還請求に関しては、僕が所属する〈もやい〉にも生活保護利用者からの相談が多く寄せられる。

各自治体の運用において、本人に資力がない状態で一括での返還を求めるなど、返還請求を受ける生活保護利用者が最低生活を割り込む恐れを生じさせてしまうような事態も現実には起きている。

また、そもそも63条による費用返還はいわゆる「不正受給」においての返還とは違い、本人に瑕疵のない返還請求であるわけで、当然ながら強制徴収などの手段を講じるべきではないだろう。

また、生活保護費からの天引きとなると、生活保護利用者の最低生活保障が難しくなってしまうことは言うまでもない。これは、地方自治体からの要望により盛り込まれた論点だと思うが、非常に大きな問題である。