「生活保護法改正」は一体誰のため? 5つの問題点を徹底解説

このままでは当事者が…
大西 連 プロフィール

生活保護法改正法案の問題点

以上をふまえた上で、今国会で上程されている生活保護法改正法案(以下「改正案」)について見ていこう。

この「改正案」はいくかの問題点をふくんでいる。

このままでの可決成立は多くの生活保護利用者にとって、また、生活保護を将来的に利用する可能性があるすべての人にとって、望ましいものではない(生活保護法改正法案に関連した生活困窮者自立支援法案等の改正についてはここではふれない)。

主に5つの点について問題がある。

 

生活保護世帯の子どもの大学進学について

「改正案」では「進学支援準備金」を創設し、生活保護家庭の子どもの大学進学に際して自宅から通う場合は10万円、自宅外から通う場合は30万円を一時的な支援として給付するとしている。

生活保護家庭の子どもの大学進学については以下の記事を参照してもらいたいと思うが、現在の制度運用のなかでは、生活保護世帯の子どもの大学進学は原則として認めていない。

進学する場合は「世帯分離」と言って、その子どもだけ生活保護から外す扱いをして進学を可能にする(進学する子どもは生活保護から外れるためその子どもの生活費等の費用の支給がストップする)。

とはいえ、「世帯分離」をするとその家庭(子ども)に経済的な負担が大きくのしかかる。

事実、生活保護世帯と一般家庭の大学への進学率の違いは顕著で、「子供の貧困対策大綱」によれば、生活保護家庭の子どもは大学等(大学・短大)が19.2%、専修学校等が13.7%で進学率全体が32.9%に対して、一般家庭の進学率は、大学等(大学・短大)が53.9%、専修学校等が17%で進学率全体は70.9%と言われている。

この生活保護家庭の子どもの大学進学については、昨年より国会でもたびたび議論が起き、「改正案」ではそこへの支援が盛り込まれた形だ。

しかし、残念ながら「改正案」では、「世帯分離」は維持したまま、進学時に一時金を支給する、というものである。

もちろん、これまではそういった一時金は存在しなかったので一部制度が拡充したと考えることはできるが、「世帯分離」が維持されたままだと、当然ながら進学する子どもの負担は相変わらず大きく、進学率の向上につながるとは考えにくい。

野党が提出している対案では「世帯分離」という扱いをやめて「世帯内での就学」を認めるという内容になっており、生活保護家庭に子どもの大学進学に関しては野党案の方がはるかに優れている。

生活保護家庭に子どもが大学進学する場合、たとえ国立大学でも4年間で学費等は約250万円、生活費も稼がなければならないので仮に月に10万円必要だとすると(一人暮らしだとこの金額では足りないが)4年間で500万円ほど。

学費の減免や給付型の奨学金を活用できたとしても貸与の奨学金やアルバイトで数百万円を確保しなければならない計算だ。

進学時の10万円(自宅外から通学の場合は30万円)のみの支給ではとても足りないだろう。政府がこれで生活保護家庭の子どもの大学進学への道筋を作ったと思っているのであればあまりにも軽薄である。