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深刻化する職場での「女同士のパワハラ」一体どうすれば?

「女王蜂症候群」をご存じですか

「女性課長から目の敵にされ、パワハラを受けるなんて……。恐ろしい女同士の闘いはこりごりです。私が管理職を目指していたことが、彼女の私へのいじめ、嫌がらせに拍車をかけていたことを考えると、もう怖くて出世ラインには乗れません」

かつてメーカーで総合職として勤めていた裕子さん(仮名、43歳)は女性上司からパワハラに遭い、思い悩むうちに心の病を患って退職を余儀なくされてしまった。5年前のパワハラ辞職を振り返り、管理職昇進を望まない理由と女性登用に関する会社の問題点について、こう思いの丈をぶつけた。

「その女性課長のマネージメント能力が低いことは、部長も人事部も周囲は皆わかっていたのに、社内では数少ない女性管理職として腫れ物に触るように気を遣われて、誰も改善するよう指導しなかった。間違った女性登用を進めたせいで、私のような被害者が出たんです」

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職場で女性たちの仲が悪いワケ

女性が同性、特に女性の部下を、敵と見なして手厳しく対応する現象は、「女王蜂症候群 Queen Bee Syndrome)」と呼ばれる。米国・ミシガン大学の3人の心理学者が1973年に発表した論文で初めて登場した概念で、1970年代に欧米で話題になった。

男性優位社会で努力して指導的地位を手に入れて成功した女性ほど、その地位に固執し、自分より職場で下位にあり、かつ有能な女性を、自身の地位を脅かす存在、すなわち敵と見なす。そして、後進を指導して助けるどころか、足を引っ張って昇進を妨害するという。

女王蜂が、ライバルとなるメスと敵対する習性からそう名づけられたようだが、当時の論文では概念構築に比重が置かれ、現象が起きる要因について明確な答えは示されていない。

女性は管理職ポストに就くことが男性に比べて難しいだけに、また女性間で生き方、働き方が多様なだけに、自分と同性の他者を比較し、競争し合う傾向が強いことが影響しているのではないか。約20年に及ぶ取材と調査からそう私は考えている。

中でも、子どもの有無というライフスタイルの違いは、問題をなおいっそう深刻にしているようだ。冒頭の裕子さんの事例でも、パワハラを行った既婚で子どものいない女性上司が、育児と仕事を両立させたうえに管理職昇進を目指している裕子さんを疎ましい存在と捉えた可能性は高い。

 

「女王蜂症候群」が初めて発表された時期は、米国を中心に巻き起こった、職場での男女平等、男女間差別へのアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)などを求めたウーマン・リブ(女性解放運動)とも重なり、欧米での女性の社会進出に伴って表面化した問題だったといえる。

近年の欧米でのこれに関連した研究やメディア報道では、管理職を含めた女性の職場での活躍が進むにつれ、「女王蜂症候群」現象が弱まったという指摘や、存在自体を疑問視する見方も少なくない。これはつまり、男女ともに働く者と企業など雇用する側がかつての経験を教訓に、「女王蜂」問題を徐々に乗り越えていった結果なのではないか。

そうして日本で今、米国から遅れること40数年、ようやく指導的地位に就く女性が少しずつではあるが増えているなか、女性管理職と女性部下という従来はなかった職場の人間関係が生まれたことで、「女王蜂」問題が明るみになり始めたといえる。

ちなみに、女性管理職比率を国際比較すると、2015年値で日本の12.5%に対して、米国43.6%、英国35.4%、フランス31.7%、スウェーデン39.5%(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2017」)と、日本と欧米諸国との間では大きな隔たりがある。