映画『みんなの学校』より。大空小学校では先生と生徒たちの距離がとても近い ©関西テレビ放送

重度の障害があると診断されたユウちゃんが教えてくれたこと

『みんなの学校』全校道徳が生まれた理由

道徳教科化が、「ともすると価値観の押し付けになるのではないか」など多くの議論を呼んでいる。特別支援級を作らず、すべての子どもたちが伸び伸びと大きな学びを見せる大空小学校では、2012年からずっと「全校道徳」という授業を行い、全国から「真似をしたい」という学校のオファーがあるという。

2回にわたり、「みんなの学校の道徳」を木村さんに語っていただいた。公平な道徳の教え方に続き、前回は具体的な「全校道徳」の授業内容をご紹介したが、その実現のきっかけは、ひとりの「障害がある」と診断された子の勇気ある行動だった。

2015年に放映されたドキュメンタリー番組や映画が多くの賞をとった『みんなの学校』こと大空小学校 ©関西テレビ放送

「全校道徳」のきっかけは校長講和の失敗

大空小学校では「全校道徳」という授業を5年前からやっています。映画『みんなの学校』で全校道徳のシーンがありますね。あれはまさに始めたばかりの時です。

これは実は私の大失敗から始まったことなんです。

 

どこの学校でも、月曜日朝全校朝会を開いて校長先生がお話しますよね。私はこれが大嫌いだったんです。これだけ社会に情報がある時代に校長先生の長い話を聞く。ずっと教員時代から無駄だと思っていました。子どもたちが嫌になっているのを「ちゃんと聞きなさい」って言うじゃないですか。

そうなると子どもたちが学校に来たくなくなっているのもわかる。ですから私は「元気? 困ったことない? では終わり」くらいで終わらせていました。

ところが、大空小学校開校から5年目くらいのときでしょうか。学校からの帰り道、大きな駅の電車のホームで突然老人が倒れ、その場に居合わせた同僚と私とで、おじいちゃんが線路に落ちないように大声を出しながら事なきを得たことがありました。私たちがいた向こう側のホームで起きたのですが、同僚がその場に走っていき、私はおじいちゃんに「落ちたらアカン!」と声の限り叫んでいました。

ほっとしてふと後ろを見るとスマホをいじっている若者がいっぱいいた。おばちゃんたちがワーワー声を出したり走ったりしている中、彼らが完全に他人事に感じていたとしか見えなかった。おばちゃんがやっているからいいかと思ったのかもしれないですけれど、これには腹が立ちました。

月曜日には全校朝会があります。おごりを持った見方かもしれませんが、「こんな若者になったらあかんで!」ということを教えなアカンと思ったわけです。それは、教師の上から目線だろうし、若者の気持ちは別にあったかもしれないのですが、でもそのことを言いたいと思ったわけです。

そこで、いつもはほとんど話をしない月曜日の全校朝会で話すことを決めて、教材研究などたくさん準備をして、燃えて挑みました。導入!展開!まとめ!を完璧にしあげたつもりでした。