天安門事件にまつわる中国著名人の「黒歴史」を辿ってみた

ジャック・マー、習近平の嫁も…
安田 峰俊 プロフィール

習近平嫁の秘密の過去

【彭麗媛】
1962年11月20日生まれ 歌手、習近平夫人
天安門事件当時:中国人民解放軍歌舞団(26歳)
【gettyimages】

中国のリーダー・習近平は実はバツイチである。最初の妻と離婚後の1987年、当時24歳の彭麗媛と再婚しているのだ。彼女は国民的歌手であり、軍内を中心にその容姿と歌声には根強い人気があった。やがて習近平が出世した結果、彭麗媛が現在の中国のファーストレディーとなっている。前任の江沢民や胡錦濤の夫人とは違い、彭麗媛はその美貌と知名度を活かして、積極的に表舞台に出て活動する傾向が強い。

ところで彭麗媛は、夫の習近平よりも9歳年下の1962年生まれであり、天安門事件の際に広場を占拠していた若者たちと、それほど年齢が違わない(天安門の学生デモには、大学を出てすぐの若手講師も多く参加していたことはすでに述べた)。

では、彭麗媛は天安門事件のときになにをやっていたのか。第1期習近平政権の成立直後の2013年3月、ある過去の写真が中国のネット上に掲載されて物議をかもしたことがある。

天安門広場で戒厳部隊兵士を前に熱唱する彭麗媛の姿を報じるアメリカのラジオ局『RFA』中国語版ニュース。兵士たちの表情には笑顔も見える

この写真の出所は、1989年刊行の軍のグラフ雑誌『解放軍画報』。天安門広場のなかで、当時のアイドルである彭麗媛が人民解放軍の兵士たちを前に持ち歌の『私のかわいい人』を熱唱した場面である。

アメリカでマリリン・モンローが朝鮮戦争の戦場に慰問に行ったのと同じことなのだが、彭麗媛の場合は時間と場所が悪かった。このリサイタルがおこなわれたのは6月上旬。つまり、つい数日前まで学生や北京市民を相手に戦車を乗り回して発砲していた兵士たちを、その弾圧行為を象徴する場所である天安門広場で慰問していたのだ。

結果、中国のネット検閲部隊は躍起になってこの写真を削除したが、BBCなど西側各国の中国語ニュースがこれを報道。彭麗媛は思わぬ形で、自分の「黒歴史」を世界に知られてしまうことになった。

天安門事件については、海外の民主派中国人たちが長年にわたって中国政府による事件の再評価(武力鎮圧の誤りを認めること)を求めている。だが、保守的な習近平政権のもとでこれがなされる可能性はタダでさえも低い――。そのうえ、習近平としては妻の過去に関係する話でもあるので、なおさら天安門事件については手を触れたくないことであろう。

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