置き去り犬「めぐちゃん事件」愛犬家の漫画家が憤った判決の理由

犬は「物」でしかないのか
折原 みと プロフィール

犬の「虐待」と「所有権」は別問題

動物愛護の観点が、民法の所有権において考慮されないというのは、動物を家族のように思う人間にとっては納得しにくいことだ。今回の件で何よりも危惧されるのは、14歳という高齢のめぐちゃんにとって、今さら飼い主や環境が変わるのは、精神的にも健康上も悪影響が大きいのではないかということだ。裁判ではその点は考慮されなかったのだろうか?
 
民法上は犬は『物』なので、えんぴつやパソコンと同じで、『環境が変わる』ということは考慮されません。個人的には私も思うところがありますが、民法上は、それで犬が精神的に悪影響を受けるとしても所有権が移ることはありません」(坂本弁護士)
 
人間の感覚とはずれている冷徹な法律の解釈。それが、めぐちゃん事件に対する判決の理由だった。

ゴールデンレトリバーは人が大好きな甘えん坊だ 写真提供/折原みと

では、これが人間の子どもだったら?
 
もしもめぐちゃんが「物」じゃなかったら。 例えば、「人間の子ども」だったとしたらどうなのだろう? この点についても、坂本弁護士に伺ってみた。坂本弁護士は離婚弁護を多く取り扱っている。
 
仮に2~3歳くらいの子どもが放置されていて、児童相談所に保護されていたとします。3カ月後に母親が名乗り出てきたら、原則として『親権』があるのでやはり親元に返されることになります

ただし、虐待などの事実が証明され、親権の行使が不適当であることによって子どもの利益を害すると思われるときには、最長2年の『親権停止』や『親権喪失』を申し立てることができます。この申し立てができるのは、子どもの親族、検察官、未成年後見人としての市や区、児童相談所長など。子ども本人も申し立てすることができます

 

だが、自治体の第三者機関が申し立てを行った場合、虐待と認定されるには具体的証拠をかなり集める必要があるし、時間もかかる。人間でも虐待を証明することは簡単でなく、親権はそれほど強いと言える。ただ、救われるのは、大きくなって言葉が話せるようになれば、子ども本人からも申し立てをすることが可能だということだ。

もしも、めぐちゃんが言葉を話せる人間の子どもだったとしたら、いったい何を望んでいるのだろうか……?