キリストは青森で死んだ?今年で55回目、日本屈指の奇祭をご存知か

観光イベントにすぎないと思いきや…
岡本 亮輔 プロフィール

村発行の観光ガイドの表紙にもキリストの墓、キリストの遺書、ナニャドヤラの写真が用いられ、「歴史のロマンとキリストの里」「神秘の里への誘い」というキャッチコピーがつけられている。

さらに、青森県が2011年に県内の「ミステリーゾーン」と「パワースポット」を約60ヵ所選定してパンフレットを作成したが、もちろんキリストの墓もミステリーゾーンとして掲載されている。

実際、キリスト祭には数百名の参加者がおり、また、新郷村を訪れる年間1万人程度の観光客のほとんどがキリストの墓を目的としているという。

キリストの墓があるからこそ、新郷村は近隣の町や村とは異なり、訪れるべき場所として認識されるのだ。

キリスト祭の様子

墓の主は誰でもいい…?

そして特に注目したいのが、キリストの墓に対する村の人々の理解だ。

キリスト祭を司式する神職によれば、墓の主が誰であっても慰霊は大切であり、そのために毎年キリスト祭は行われる。そして、万が一墓に祀られているのがキリストであったとしても、八百万の神を擁する神道にとって何ら問題ないというのだ。

祭のスタッフを務める村職員も、墓の主がキリストとは思わないが、葬られている人はおそらく村の先祖であり、古くから続いてきた供養を絶えさせてはならないと語って下さった。

 

鳥谷が残した手記によれば、キリストの墓の場所は発見以前も墓所舘と呼ばれており、こうした語りを裏づける。キリストではないにしろ、村の人々にとって忘れ難い人が葬られていたことを想像させる。

そして、墓所舘という匿名がキリストという固有名で上書きされたことで、観光の契機が生まれたのである。

実のところ、いわゆる「普通の観光地」も偽物であふれている。天守閣がなかった城に天守閣が付け足されたり、資料館の展示では古代人が何を考えていたのかが詳細に説明される。

こうしたものを偽物と割り切って楽しむのも1つの方法だが、むしろ、そうした偽物がどのようなプロセスでその場所に根づき、時として本物と見なされるようになったのかを考える方が面白いだろう。