「徹夜運転」の車に結婚直前の息子を殺された家族の慟哭

なぜこの国では「厳罰化」されないのか
柳原 三佳 プロフィール

米国では居眠り事故が4割超

ちなみに、データは少し古いのだが、『居眠り運転発生の生理的メカニズム』(林光緒・2013)という論文の中に、居眠り運転について次のようなデータが掲載されている。

<1994年の米国睡眠障害研究委員会の報告によれば、午前2時~7時と午後2時~5時に発生した交通事故の数は事故全体の41.6%を占めており、死亡事故の発生件数も全体の36.1%を占めていた。>

日本の死亡事故に占める居眠り運転の割合が0.6%というデータと比べると、あまりの違いに驚いてしまうが、そもそも、昨年日本で起こった死亡事故の内、「過労運転(居眠り運転)」が原因となった事故が18件という統計データは、本当に正しいといえるのだろうか? 

 

緒方さんは言う。

「自動車事故も、航空機事故や鉄道事故と同じ“交通事故”です。なぜ事故が起こったのか、運転者はなぜミスを犯したのか、そしてなぜ、被害者の命は奪われたのか……、その原因を真実に基づいてしっかり追求し、再発防止策につなげていくことが必要なのではないでしょうか。特に、睡眠不足での運転はいかに危険であるかを、もっと国民に正しく伝えるべきです」

睡眠状態のチェック義務化は進むが…

国土交通省は、2018年6月1日から、『睡眠不足に起因する事故の防止対策強化』として職業ドライバーに対する睡眠状態のチェックを義務付けることになった。

広報資料にはこう記されている。

<バス・タクシー・トラック事業について、運転者の睡眠不足による事故の防止を一層推進するため、睡眠不足の乗務員を乗務させてはならないこと等を明確化し、点呼簿の記録事項として睡眠不足の状況を追加します。>

「睡眠不足」による運転については、これまで行政として具体的な対策がなされてこなかった。それだけに、この取り組みは大変画期的だ。

ただ、事前点呼で睡眠障害をどこまでチェックできるのか、また、正直に申告した場合、本当に休むことができるのか? 業界で働くドライバーたちからは、否定的な意見も上がっているが、過労による重大事故の防止に効果が出ることを期待したい。

また、この問題は決して、バス・タクシー・トラック事業だけのものではない。一般ドライバーも、仕事や旅行でつい睡眠不足のまま無理をしてしまうことがあるはずだ。

この機会に、「睡眠不足」による過労運転がいかに危険であるか、今一度認識すべきだ。そして、「過労運転」が客観的に立証できる場合は、「危険運転」を前提に捜査できるよう、法改正も含めて検討すべきではないだろうか。

飲酒運転厳罰化が事故の抑止につながったように、「居眠り運転」による重大事故が減ることを期待したい。