「徹夜運転」の車に結婚直前の息子を殺された家族の慟哭

なぜこの国では「厳罰化」されないのか
柳原 三佳 プロフィール

「居眠り運転」を立証できない? 道路交通法の壁

「過労運転」(違反点数25点)は、道路交通法上、飲酒や薬物使用時の運転と同じく、大変危険な行為として位置付けられている。

『過労運転等の禁止』
第66条 何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。

ところが、現実には「過労運転」を判定する明確な基準はなく、「過労による居眠り」が疑われる多くの事故が、違反点数2点の「わき見」(安全運転義務違反)で、軽く処理されている可能性が高いというのだ。

交通事故を扱ってきた複数の警察官にも話を聞いたところ、たとえ無理な徹夜運転や睡眠不足が客観的に証明されたとしても、それが「過労」となって事故につながったか否かの裏付けは非常に難しいという。

また、「過労運転」で立件する場合、ときには事故前の足跡をたどらなければならないため、捜査が管轄外にまで及んでしまうこともある。そのため、どうしても事故処理が簡易に済む「わき見」で処理してしまいがちなのだという。

 

実は、私自身もまさにそうした捜査を「加害者」として経験したことがある。初心者の頃、自動車専用道路で居眠り運転をし、追突事故を起こしてしまったのだ。ところが、いくら真実を述べても警察は調書にはそのことを書こうとしなかった。

「眠気が襲ってきたから車を停める場所を探していて、わき見したんだね?」

そう言って、「わき見」へと誘導され、私は意味がよく分からないまま、調書に署名捺印をしてしまった。今振り返れば、それは警察側の温情だったのかもしれないが……。

こうした捜査の実態は、交通事故統計にもはっきりと表れている。以下の表は、日本で交通事故を起こした第一当事者(過失の重い方)の法令違反別件数をまとめたものだ。

平成29年の「過労運転」による死亡事故は、わずか18件(全体の0.6%)。「わき見」は393件、「安全運転義務違反」の合計は1920件となっているが、これを見ると、「過労運転」(居眠りを含む)による事故が、「わき見」や「漫然運転」など「安全運転義務違反」と比べていかに少ないかが一目瞭然だ。

つまり、日本では「居眠り」を原因とする交通事故がデータの中から抹殺されてきた可能性があり、こうした現実が、日本における「睡眠不足に起因する事故」の防止対策に大きな遅れをもたらしたと考えられるのだ。