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物理学者はAIをこう見る~あなたは「正しく」怖がれていますか?

これから重要になる「問い」とは何か

AIは本当に「怖い」のか?

この数年で「人工知能(AI)」という単語を聞く機会が増えました。

中学生の天才プロ棋士藤井聡太氏が永世七冠の羽生善治氏を破ったことが話題になったその裏で、いまやAIはプロ棋士を凌駕するレベルに達しました。

より複雑な囲碁ですら、AI「アルファ碁」がトップ棋士を破り、その実力は今なお進化を続けています。

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普段お世話になっているGoogle検索では、多少タイプミスをしてもAIが意味を汲んでくれますし、iOSに搭載されたSiriは、「Siriさん」とでも呼びたくなるような反応を返してくれます。事故のために中断しているとは言え、AIによる自動車の自動運転の流れはもう止まらないでしょう。

そんなAIの急進展にそこはかとない不安を覚える方、結構いるんじゃないでしょうか。

例えば職業。AIにできることが増えれば、自分の仕事が取られてしまうかも知れません。これは、産業革命時代、仕事が機械化される中で労働者が感じた危機感と同じです。

歴史は繰り返します。

かつて「機械化」は労働者と資本家という対立構造を生み、それはやがて政治に組み込まれ、悲しいかな、多くの戦火を生み出しました。

AIによって子供たちの時代に新たな火種を撒いてしまっているのかも知れない。そんな不安が頭をよぎる方もいるでしょう。

AIによる自動コントロールはやがて船舶や航空機に及ぶでしょう。

人が乗らなければ、機械は搭乗者を守るという軛(くびき)から解放されます。人では堪えられない加速度で飛び回る戦闘機に、人が搭乗するが故に性能を制限された戦闘機が勝てるはずがありません。

「相手よりも強い武器を持つべし」という極めて現実的な理由で、武器はどんどん無人化されるでしょう。そして、作戦の立案にまでAIが関与し、戦闘行為に人の手が何一つ必要なくなった未来に、AI搭載の武器達が「低能な」人間の支配下に置かれることを嫌い、牙を剥くかも知れない。

往年の名作「ターミネーター」やアイザック・アシモフのロボット3原則を彷彿とさせます。怖いですね。

 

「わかる」ことの大切さ

さて、ここで敢えて問います。

そもそもAIとはなんでしょう?

どんなことでも同じですが、怖いと感じるものをただなんとなく怖がるというのは、お化けが怖いという感情と大差ありません。

もちろんこれは自然な感情ではあります。そもそも生物は、わからないもの・未知のものを過大評価して怖がるという戦略を採って進化してきました。さもなければ自然界を生き延びられなかったからです。わからないものは無条件に怖いのです。

ところが、人間はこの生物的な反応に対して対抗手段を持っています。

まずはその対象の正体を見定めるべし。
しかる後に、本当に怖いものは何なのかを見定めるべし。

科学の大原則、と言っても良いですし、彼を知り己を知れば百戦危うからず、と言っても良いです。AIを正しく怖がるための第一歩は、AIをわかることです。

もちろん、「わかる」と言っても、何も微に入り細に入り、全てを理解する必要はありません。そんなことが出来るのは専門家だけ。私も含めて、門外漢が「わかる」というのは、

その領域の土台を形成しているアイディアを理解する

という意味です。これはちょうど、足し算がわかれば掛け算を理解出来たり、基本の漢字を知っていれば、初見の難しい漢字でも何となく意味が取れたりするのと同じです。

そして私の専門は素粒子物理学。「同じようなモンやないか!」と感じるかも知れませんが、それは誤解というもの。AIは完全に専門外です。

というわけで、これから書くことは、あくまで「専門外の人間が仕事の合間に勉強したAIの基礎」です。物理屋流の「わかり方」を楽しんでいただければ幸いです。