Photo by Gettyimages

マツダの好調を支える「2%戦略」その秘密

人の意見をあえて聞かない

「クールジャパン」ブランドが軒並み不調ななか、海外でもその存在感を発揮しているマツダ。マツダは他のメーカーとなにが違うのか。プレミアムブランディングのプロで、『マツダがBMWを超える日』の著者・山崎明氏が解説する。

日本車凋落の理由

日本が得意としてきた自動車や家電の分野で、韓国や中国をはじめとした新興勢の進展ぶりはめざましいものがある。日本にいると気づきにくいが、彼らのプロダクトは安いうえに品質もかなり良くなってきているのだ。

スマートフォン市場では韓国勢や中国勢の存在感が日増しに高まっているが、世界的にはテレビ市場でもサムスンとLGが世界のマーケットを席巻し、日本ブランドの存在感が希薄になっている。今話題の有機ELテレビ用パネルを作れるのは韓国のLGだけであり、最近有機ELテレビを盛んに宣伝しているソニーもパナソニックも、LGからパネルを購入しているのだ。

Photo by Gettyimages

世界的に見て、最高価格帯にあるテレビは今やLG製である。アメリカ最大の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)に行くと、サムスンやLGのブースは派手で人だかりしているが、ソニーやパナソニックのブースは今ひとつ活気のない印象だ。

自動車市場でも変化が起き始めている。アメリカでの自動車初期品質調査(JDパワー社実施)で大きな変化が起こっているのだ。

ちょっと前まではポルシェとレクサスがトップ争いをしていて、上位は日本勢が占めていたのだが、ここ数年韓国勢の向上がすさまじく、2016年にはついにキアが1位になった(2位はポルシェ)。

2017年はキアが1位を維持しつつ、2位にはヒュンダイが2015年に立ち上げたプレミアムブランドのジェネシスが入っている。韓国勢のワンツーフィニッシュである。3位はポルシェで、日本ブランドで最上位は日産の10位である。レクサスは業界平均値にまで沈んだ。

 

これは、トヨタやレクサスのスコアが悪くなったからではなく、韓国勢や欧州勢の不具合発生率が大きく低下しているためである。

「安くて品質が良い」という日本のお株を韓国勢に奪われているだけでなく、デザインなど商品の魅力も韓国勢に対して劣勢となってしまっている。このままではいけないことだけは確かである。

「安くて高品質」に無理に固執すれば、必ず収益を圧迫するようになる。数年前まで、日本の家電メーカーのテレビ事業が韓国勢とのシェア争いに対抗しようとして軒並み大幅赤字となっていたのは記憶に新しい。

日本ブランドも、価格競争力が維持できる分野は少なくなっていくと考えられ、欧州プレミアムブランドのような「高価格でも喜んで買ってもらえる」というブランドに変化させていかないと、どんどん厳しくなるだろう。そのためには欧州ブランドのように長期的なブランド育成を見据えたブランド構築戦略が是が非でも必要であり、ブランド構築までにかかる時間を考えると「待ったなし」といってもよいのではないだろうか。

とはいえ、素晴らしい製品であることを理解させても、それだけで買ってもらうことにはつながらない。数多くの選択肢の中で、「私にふさわしいのはこれ」と思わせない限りプレミアム製品としては成立しない。他の高級ブランドにはない価値、思想、キャラクターを備え、商品企画からすべての製品、実際に売る現場に至るまで徹底されて初めて、人々に選ばれるプレミアムブランドになる。

この点が、マーケット主導型で開発されることの多い日本製品の最大の弱点で、克服するには、経営論・組織論にまで及んで考える必要がある。

独自性ある価値とはまた、時代や流行に左右されず永続的なものである必要がある。たとえばトヨタ・プリウスは一時ステータス性を持つことができたが、ハイブリッドシステムに依存していたがゆえに、ハイブリッド車の普及とともに急速にそのステータスを失っていった。

テスラも電気自動車の普及に伴い、そのステータス性は失われていくであろう。せっかく投資してブランドを築き上げても、特定の時代にのみ有効なブランド作りでは、やがて「賞味期限」が来てしまうのだ。