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稲田元大臣をすっ飛ばした防衛省報告書の「不自然さ」

これでは日大・モリカケと一緒だ

そんなに軽くていいものか

実力組織である自衛隊で、防衛大臣の指示が下まで伝わらなかったということを、こんなに軽く扱っていいのだろうか――。

陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報問題で、防衛省は5月23日、「組織的隠蔽はなかった」とする調査結果を公表した。

これまで「保存されていない」としていた日報が見つかりながら、探索を指示していた防衛大臣に報告されていなかったのは、職員間の意思疎通が不十分だったことが原因で、意図的な隠蔽ではなかったと結論付けた。

これを受けて、小野寺五典防衛大臣も「シビリアンコントロールに反するような問題はなかったと考えている」と話した。

 

これが真実であれば、あまりにもお粗末な話である。民間企業でも「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」は基本中の基本である。まして、国防を担う実力組織の自衛隊では、「ほうれんそう」の一つひとつに自衛隊員の命はもちろん、国民の命がかかっていると言っても過言ではない。

しかも、今回問題になっているのは、最も重要な防衛大臣の指示である。それすらしっかりと伝わらないような組織だとしたら、シビリアンコントロールに不安を抱かざるを得ない。

防衛省は、結果的に大臣の指示を履行できなかった対応は不適切だったとして、関係者やその監督者17人を処分したが、ほとんどが懲戒で最も軽い「戒告」や懲戒に至らない「訓戒」といった軽い処分であった。いくら組織的隠蔽ではないとはいえ、防衛大臣の指示というものは、そんなに軽いものなのだろうか。

野党からは「どう考えても不自然だ」などと調査結果を疑問視する声が上がっているが、そう思われても仕方がない内容だろう。私も、処分の軽さも含めて不自然だと思う。

小野寺五典防衛大臣小野寺五典防衛大臣 Photo by GettyImages

一方で、私は、稲田大臣の指示が履行されなかったのは、ある意味で当然だったとみている。その理由を以下に記してみたい。

防衛省の調査報告書によれば、稲田大臣がイラク日報の探索指示を出したのは、昨年2月22日の朝、衆議院予算委員会が始まる前の打合わせの場であった。

これを受けて、統合幕僚監部の背広組(官僚)トップの辰巳昌良総括官(当時)が、統合幕僚監部の「参事官付」という背広組中心の部署にイラク日報の探索を指示。同日12時頃、参事官付の職員Aが、統合幕僚監部、陸上幕僚監部、航空幕僚監部の担当者に対して、以下のメールを送信した。

〈本日の大臣レクの際に、大臣より、『イラクの日報は本当にないのか?』とのご指摘がありました。ついては、たびたび恐縮ですが、探索いただき無いことを確認(紙媒体・電磁的記録)いただいた組織・部署名を本メールに返信する形でご教示いただけますでしょうか。〉(原文ママ)

このメールには、稲田大臣からイラク日報を探すよう指示があったことは明記されていない。書いてあるのは、「イラクの日報は本当にないのか?」と質問があったことだけである。メールの後半部分も、日報の探索を求める指示というよりは、日報が無いことを確認した部署を報告してくれという指示に読める。

実は、この約1週間前にも、Aは統合幕僚監部、陸上幕僚監部、航空幕僚監部の担当者に対してイラク日報を探索するよう指示していた。野党の国会議員から資料提出要求があったからだ。これに対して、統合幕僚監部、陸上幕僚監部、航空幕僚監部の担当者はいずれも日報はないと回答していた。

そのため、陸上幕僚監部の担当者はメールを読み、再探索の指示だとは受け取らず、1週間前に探索して日報の存在が確認できなかった部署を報告するものだと思ったという。確かにこのメールの文面では、そう受け取るのが自然である。