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検証・イニエスタに楽天が支払う「年俸33億円」は高いか安いか

チームの年俸合計を一人で超える金額

世界が注目する超一流選手の「値段」

5月24日、J1リーグのヴィッセル神戸は、スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(34才)と正式に契約した。このニュースに、日本列島のサッカーファンは騒然。のみならず、世界中が目を瞠った。

「神戸の選手が羨ましい!」

多くのJリーガーたちも、一度でいいから共にプレーしたいと羨望の眼差しを向けた。プロの目から見てさえ、異次元の選手。そんなプレーヤーがJリーグにやってくるのだ。

イニエスタは、どこがすごい、というレベルの選手ではない。

スペインでは、人々は彼の背番号8を横に倒して、その才能を「無限大」と表現する。卓抜した技術と戦術眼によって、悉く敵の裏をかき、味方を活かし、ピッチで独自のフットボール世界を創り出せる。まさに「無限の人」と言ったところだろうか。

もっとも、それだけの選手を日本に連れてくるのだから、相当の資金が必要になる。3年契約で、年俸は推定33億円。

はたしてスポーツビジネスとして、これは高いのか、安いのか?

 

Jリーグ最高年俸の5倍以上

まず、イニエスタほどのサッカー選手は世界を探してもいない。

そのプレーの源流は、彼がバルサの下部組織で育ったことにある。無論、天賦の才もあったのだろうが、「時間と空間を支配する」という指導を徹底的に受けた。

スモールスペースでは相手の裏をとる際だったボールコントロールを見せ、守備をかいくぐりながら、抜け出せる。そうかと思えば、ピッチの端っこまで見渡し、逆サイドにポジションの良い選手を見つけ、適時に精度の高いパスも送れる。

イニエスタには、ポルトガル代表クリスティアーノ・ロナウドのようなパワーやスピードはないし、アルゼンチン代表リオネル・メッシのような超人的な得点力もない。

しかし、ボールの道筋をデザインできる。一つのパスにメッセージが込められ、触った瞬間、味方に活路が与えられる。たとえボールを触らなくても、彼が立ち位置を変えるだけで相手は幻惑される。ボールの回りが良くなる。それは魔法に近い。

最高のボールプレーヤーとして、イニエスタはバルサ、スペイン代表の中心となり欧州、世界を制してきた。

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今のJリーグの年俸は、ルーカス・ポドルスキ(ヴィッセル神戸)の6億円が最高で、その次はジョー(名古屋グランパス)の3億5000万円。日本人選手最高は遠藤保仁(ガンバ大阪)の1億5000万円と言われる。J1リーグの選手の平均年俸は2000万円強である。

こうした数字を考慮に入れると、年俸33億円は確かに飛び抜けて高い。

しかし、イニエスタがJリーグのクラブに入団するというニュースの発信力は当然凄まじく、日本中だけでなく、世界を駆け巡った。入団発表直後には、東京ドームへ東北楽天ゴールデンイーグルスの試合を観戦に訪れ、その映像が世界に配信された。波及効果は計り知れない。

ヴィッセル神戸を運営する楽天の三木谷浩史社長はバルサと交渉し、すでに2016年から、4年間で280億円のパートナー契約を結んでいた。

目的は国際的なブランド価値の向上。世界30ヵ国近くに取引先を持つグローバル企業にとって、こうした活動は欠かせない。とりわけヨーロッパ企業との取引では、スポーツ、特にサッカー界への貢献が大きなメリットになる場合も(主に信用という点で)少なくないのだ。

楽天にとっても、イニエスタはアイコンとしてこれ以上ない存在だろう。